静かな五月のピアノに寄せて 音だけのために 3
考えたことさえない
きょう繰り返された呼吸の回数
おびただしい緩急の
滑らかに揺れて過ぎた一日を
在り得たはずのない
背にひんやり落ちくる後悔さえ
もう思い返しはしない
すべて投げ打って生きると決め
ただかくあることだけ
息づくことだけを願いつづけた
春の泉にほとばしる
静かな静かなだけの季節の音
軽やかに指を踊らせ
息をころしたような グリサンド
考えたことさえない
きょう繰り返された呼吸の深さ
ただそれだけをとも願っていた
指に柔らかなピアノの
胸の波頭を打ち砕いて進む曲