雨のクレマチス | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



tessen






 五月の風を待たぬ風車(かざぐるま)
 蔓花(つたはな)の女王はいとも静かに咲いていた
 まだ冷たい雨に濡れて


 鉄線の名に恥じない厳しい蔓で
 ここまではいあがってきたことなど誰にも気どられず
 誰かの慰めになろうなどと考えてみたこともない


 透きとおる静けさに幸いにも気づく旅人にだけ立ち現れる
 その時のほかはただ八弁の萼の薄衣をまとい
 ひっそりと孤独な木陰に咲き濡れているだけだ