月が笑っていた | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


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 花を散らした冷たい風の中で

 薄着の僕はまるで裸のように

 凍てついている

 そんな感覚の遥か上の遠い空でチシャ猫が笑っていた




 アルデバランが光る砂の粒



 春は冬さ

 氷のように冷たい空気にもかかわらず

 氷のなかでこそ

 春が匂う



 清けさのなかで
 
 夕べの月が欲望に悶える

 君が乳房を与えるときに

 僕はくちづけで応える

 その甘い冷たさに



 それを恋の季節だと僕は呼ばない

 そうではない

 それは僕の生と死の季節

 あなたを抱きたい春の夜

 生きるために笑うのだ

 笑って息つまるほどに



 笑いのない顔を越えてしまう

 顔のない笑い

 謎こそが愛

 あなたと僕の
 
 胸を裂くような

 遠い愛