ふと逸(そ)れた道の先で
思いがけず見つけた
人影も絶えた真夜中の
大きなモールの駐車場
見渡す限り数台の
車がぽつんとあるだけの
規則正しく立ち並ぶ
照明の光のまにまに
アスファルトの黒い海が浮かんでた
もうこれで三回目
ぐるぐると闇から闇を経巡っていた
春がもうそこまで来ていても
なおまだ冷たい風が吹くなかを
アル中みたいにバーボンの
小瓶を左手に持ったまま
無意味な行為をしていたくなる
朝が来るまでこうしていようか
決して立ち止まらずに
この駐車場のこの海を
ざあざあと往還の遠く聞こえる
こんな夜
もしもピアノがこの海に
黒ぐろとした砂鉄混じりの砂浜に
月の光のさやけさの中
置かれているのが見えたなら
きっと僕はこらえることもせず
小さな女の子みたいに
ぽろぽろ涙を流して泣くだろう
弾く人は要らない
僕も弾かない
ただ一台そこに
ピアノが在るだけで
過ぎ去りし時と
過ぎ去りし人
せめぎ来る未来
もろもろの出来事が波のように
寄せてくるだろう
それだけで僕は聞く
静かに荒れ狂う海の調べを
激しく燃えるような平和の音を
それだけで僕は酔う
たった一本の小瓶のバーボンを
たった一生の人生に
底しれないほど深く
誰に知らせることもないこの時を
こんなとき
いつも僕は書いている
頭の何処か胸のどこかで
べそをかき哄笑に腕震え
ウツツの広場とユメの海
比べ比べて
誰にも見せる予定のない詩(うた)を
言葉なく
千鳥に結ぶ砂浜の
ただ歩き続ける足跡として
両腕を風に与えて飛ぶように
それこそが僕の持ってる詩の秘密
詩は作るのではない
生きるのだ
それもこんな時間にただ一人
ほろ酔い気分で
甘いステップ踏むように