あるパズル | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 ぐるぐると余分な回り道をして
 時間ぎりぎりに辿り着いた者と
 道草もせずひたすら歩き続けて
 着いた後で時間待ちする者と

 問いたいのは
  どちらが先に行き着くか
 ではない

 そうではなくて
 どちらが兎でどちらが亀か

 ひたすら歩いた点では後者が亀で
 ある所まで早めについて時間を潰した点では後者が兎で
 しかし実は

 兎も亀も相手と競争していた点では同類で
 最初の二人のうち
 回り道してやっと着いた方は
 実は誰とも競争なんかしない奴だろう
 していたとしても相手は己(おのれ)か時間だった

 いや
 また
 話が脱線している!

 実は

 問いたいと思いもし
 自分でも今日半日近く考えてもいたことは

  どちらが豊かな時間を過ごしたか

 なのだった
 走行距離の長さなら回り道した者がまさるけれど
 だからと言ってそれだけが豊かさとも思えない

 つまり
 「豊かな時間」とは
 いろいろとやることがあった時間なのか
 それとも
 穏やかに何もせずにいられる時間なのか


 ただそれだけのパズル
 でも僕には今のところ答がない難問

 答は誰に聞くべきか

 おそらくは
 ある日
 自分に

 だろう