清貧行 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある




 時の素早さがこれほどまでとは思わなかった
 ついこのあいだ花開くように色づいていた葉が
 数日の間に見事に落ち重なり
 今朝は絨毯のように分厚く冬の土を覆っていた

 色合いを削ぎ落とされて木は形を明らかにし
 清貧を旨とする生き方を
修行し始める
 わずかに連れ添ったままでいる葉の幾枚かが
 残り香のように風の中に漂っていた

 けれどそれはとどめることのできないもの

 命ある者は皆季節を過ぎて行かねばならぬ
 青き葉が芽吹き輝いては色づき落ちる
 冬が締めくくる一冊はまた別の誰かによって
 次の春とともに開かれる本であるだろう

 年ごとに月ごとに日ごとに
 絶えることなく繰り返される営みの
 その繰り返しこそ続いて行く命の川だ
 冬はひととき氷でそれを覆うに過ぎず

 水温む日に解け出す水もまたとどめることができない



winterscene4