zakuro | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある





 なんだか僕はザクロを漢字で柘榴と書く気がしない
 いつになってもそれはザクロかzakuroで
 硬い皮に包まれた多くの種は秋豊穣のシンボルでもあるのだが
 口に含んだときに口中を満たす鋭い酸っぱさと微かな甘さは
 まだ当分のあいだ受精することのない精子や卵子たちのように
 あどけなく若くまだ時間の航路をほんの少ししか渡っていない
 青春の透き通るような酸っぱさと甘さのように思えるからだ