ハムスターの死 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 一匹のハムスターが死んだ
 僕より後に生まれたが
 ハムスターとしては
 じゅうぶん老いたハムスターだった
 小さな
 老いたハムスターの死の跡は
 どんな形をしているのだろう

 それは一生掘り続けて
 そして残して逝った巣穴のように
 ハムスターの生の形の
 ネガ・フィルム

 図体の大きな僕より小さな
 僕よりも老いたハムスターの死は
 小さな巣箱が僕の机に載るように
 この僕の死より小さいだろうか
 
 確かに遺骸は
 僕の手のひらに乗るほど小さかったが
 その死は決して僕の死より小さいことはない
 同じひとつのいのちであれば

 ましてや僕にとってみれば
 彼の死は僕の死より
 ずっとずっと大きな死だったと
 僕は今でも
 確信している
 
 僕が死ぬ日に
 君は僕の死をどう思うのだろう