朝がまだ形を見せぬ間から
その日一日の快晴を確信した
窓から見る水平線はすでにくっきりと引かれていた
僕はじっと窓辺で水平線を
海の碧と空の蒼の力強い区切りを見ていた
陽が昇るにつれて
それはますます際立っていった
水平線という線があるわけではない
どこか濃い緑の混じった碧の海
光に押し広げられて限りなく密度を失う蒼の空
同じ「あお」と表現されるのが不思議なほど
二つの「あお」は異なっている
ほとんど物体を持ち合わせない虚空
無限と思えるほどの生命を包み込み分厚い水の層である海原
両者は実はこの星のどこでも決して接することはない
巨大な球体である星の上に立ってまっすぐ
重力の垂線と直角を成す視線で見れば
その視線は球体にたった一点で接する接線であるゆえに
たちどころに球体は視野の中で沈み込み
遠い空と接して見えるようになる
いやこの星が古代の人々の考えたような
海が世界の終わりでこぼれ落ちている平板であったとしても
ほとんど無限に遠いところでは
大地の平面と空の平面は限りなく近づいていく
まして蒼穹は平面ではなく球面でもない
だから水平線というような線はどこにも引かれていないし
どこにも存在しないものなのだ
けれどそれは僕たちの夢を膨らませ
丘や林や浜辺とは桁違いの「遠方」であり
海を行き空を行く者たちを吸い寄せる
存在しない線であるがゆえに
永久にたどり着けない航海の目的地
異なった「あお」の決して交わらない漸近線
なのに僕たちは「水平線」を見る
それを実在と言うべきか幻影だと呼ぶべきか
僕には今もわからない
でもそれを不思議だと思う必要はない
実在か幻影であるかわからない
いや考えてもみない
そういうもので僕たちの世界は溢れかえっている
窓辺で見る鮮やかな水平線は
僕たちが「愛」と呼ぶものに似ている
ダフネとMと僕の間の水平線
それはどこかで接するように見えて
どのようなところでも接することのできないものかもしれない
朝ぼらけの窓辺で
僕はふたりを抱きしめる夢を見ていた
この二本の腕でこの胸に
まちがいなく実在するはずのこの僕の