人の季節 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 今夜は昨夜ほど冷えて来ない
 こうやって春が育ち夏になる

 春は夏になる迷い
 春は育ち始めの季節
 花が美しく咲いて
 実るための準備をする

 花は愛のきっかけ
 春はその花の季節
 美しく開き
 甘い蜜を用意する

 やがて夏は激しく
 春の用意したきっかけを燃やす
 炎天の下に生きるものも燃え上がる
 愛が実るかどうかは
 夏の終わりが決めるのだろう

 秋は実りを膨らませるために
 夏の炎を捨てて
 時間とともに過ごす

 こんなふうに人生を季節のように
 語るのは
 ただ巧みな喩えだからではない

 人も生きてあり
 一年きりの花とは違うけれど
 一度きりの人生は
 生まれ
 育って
 恋をし
 実り熟して死んで行く
 季節そのもの

 決して喩えではない
 生身の我は
 生身の汝は

 まさに季節を生きている者