花の服 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 春がもう冬の寒さを打ち消してしまった日

 初雪をそっと両手でつかんで作ったような
 ましろき君の乳房の上に
 菫と蓮華を一本一本並べていって
 君に風通しのいい肌着を作ったら
 春風の吹き込む窓のそばに寝て
 風たちが愛を語らうのを聞いてみる
 君がその語らいに目を覚まし
 桜の頬を僕の肩にあずけたら
 僕は風と語らって君の肌着を吹き飛ばす

 ひいたばかりの小麦粉をそっと片手で押えたような
 なめらかな君のお腹の上に
 タンポポの花を並べていって
 春を愛しむ花の水着を作ったら
 まだ少し冷たい波打ち際に寝そべって
 波が恋する歌を聞いてみる
 君がその歌に心を揺らし
 濡らした髪を僕の胸の上に広げたら
 僕は波と語らって君の水着を流しさる

 そうやってただこの一日を生きてみる
 そうやってただ君だけの一日を