強い風の日だった
木々は揺れ
春を吹き飛ばした
海は鳴り続けた
ダフネの熱は高く
彼女は死んだように眠りつづけた
でもダフネの顔は静かになった
抗っていたものが死んだ後で
張りつめていたものが融けた後で
眠ることが
眠ることだけが
この日にすべきことのすべてであるかのように
僕たちは
眠るダフネのそばで
僕たちの
ダフネのではない
ダフネの知らない記憶をたどり
話をして午前中を過ごした
生きるということと生き残ることの違いを
生き残るということと生きることの違いを
そうしてやってくるだろう
ダフネの明日を
昼過ぎに
ダフネが目覚めたとき
熱はもう消えていた
まるで最後の嵐が終わったように
風はやまなかったが
ダフネはさっきまで
バス・ローブを着た素足のままで
芝の上を歩いていた
長くない髪も風になびいて
一歩一歩
そう一歩一歩しか歩けないということを
ゆっくり噛み締めるような足取りで
まるで
歩き始めた子どものように
風はダフネを吹き飛ばそうとするけれど
ダフネはそれを怖れなかった
風に吹き飛ばされそうになることを
楽しんででもいるかのように
きっとそれはダフネの風との婚姻
身体を風に任せて
風に包まれ愛されて
今
ダフネはソファで僕に寄りかかり
『春の目覚め』を聴いている
花の国に咲く花と
風の中に目覚めた自分とを
重ねたり比べたりしながら
外では
春が
重い灰色の雲の中に
プラチナのように白い光の部分を広げ始める