雨音の向こうに 雨音の向こうに在るものは 濡れそぼった木々の立ち尽くす林の 果てしもなく繰り返される波紋の 立ち止まった傘の 小さく唇噛んでいた裸足の少女の 柳の揺れる川端の 朽ちた家の 甦る故郷の 濡れて走り去る風の 迷子の白い仔犬の 水滴の光抱く花びらの あなたのくずおれそうな微笑みの 雨を集めて速き小川の 転がりながら流されていく笹舟の 人の消えた浜辺の砂の 係留された帆船の 堕ちるように飛びくる海鳥の 野原に忘れられた空き瓶の 胸焦がすほどに 為すすべもなく美しく 忘れがたき甘き匂い