酔えぬ日 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 まるで
 ほがらかに
 砂に消える水のごとくに

 浴びるように
 飲みし酒

 なぜ酔わぬ
 なぜ燃えぬ

 軽はずみな生き物のごとくに
 喉をすべり
 胃の腑を焼くこともなく

 わが内に強まりしアルデヒド・デハイドロゲナーゼに
 砕かれたる炎熱
 沈鬱な狂気よ

 水のごとくに価値もなく
 冴えた目に
 すべては真昼のように明晰であり


 酔えぬ日の
 酒はむなし

 涙乾いた別れのように
 咲かずに
 落ちたつぼみのように
 夢も見ず
 匂うことなく
 酔いもせずに

 酔えぬ想いに
 重ねた杯
 置かれたままに
 時はすぎゆき

 酔わざる我を
 我は憎みし