春の雪 | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 春の雪
 かすかに頬に落ち
 消えた

 極寒の空で
 雪となり
 今は
 僕の涙か

 束の間のあいだだけ
 雪であったもの

 お前と
 ひとは
 似たもの同士

 水であるとき
 雪であるとき

 結晶の美しきとき
 流れて砂にすいこまれるとき
 陽炎のときも

 お前と
 ひとは似たもの同士
 
 乾けば消えて
 何も残らない

 在るときも
 あやうく

 季節を知らず

 いつも
 さだかならぬ
 途上のもの

 どこを出て
 どこに帰る

 つかのまの形よ