風呂の中のアルキメデス | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 春が来たのか
 からだが妙に生温かい
 そんな夜

 風呂の中で
 裸の僕はアルキメデスになった気がして
 ユリイカ
 と有頂天になって叫ぶだろう

 とうとう
 なぜ湯が湯であるか分かったと

 それは今ここで
 湯はもはや水でなく

 この僕も
 もう子どもではないからだ