花のメタモルフォーゼ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



fallenpetal

fallen petal





 冬の寒さにも
 めげずに咲いている心ばえ
 麗しと想いて眺めしを

 近寄れば

 音もなく
 息をのみ
 声消えて
 言葉失う

 明るい早春の朝
 はらりと落ちた花の死を
 僕は認めることができずに
 立ち尽くす

 愚かな花よ
 いまだ少女のナルシソス
 花弁の奥の真理の封印に

 震える指の
 まだ触れることもなきうちに

 この朝はなにゆえに訪れたのか

 近寄りし風の仕業か
 熱き想いの重さを厭いてか

 この朝はなぜ
 咲き誇りし花を奪うのか
 いまだ色鮮やかにある花を

 悲しみの涙の色は濃紺になり
 頬を満たせり

 花は去り
 露と消えにしを

 反り見ず

 願わくは
 願わくは

 散りゆく花は香りとなりてそこに在れ
 あるいは夕暮れの淡き雲
 深夜に流れる星の光芒に
 花よ
 形変わりて我とともに在れ

 姿見せぬ風になるというのなら
 往く風よ来る風になれ

 花の仕草の悲しきは
 この朝の変貌を兆す音
 ならば続けよ
 メタモルフォーゼ

 新しき
 花のかたちとなるために