夢を蒔く | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 夢という言葉で
 あなたが思い浮かべる絵は何だろう

 誰か若者が窓辺にあって
 その顔の斜め上辺りに
 ぼんやりと
 広がる空間があり
 そのなかに未来が映し出される
 だから夢は「見る」という

 しかし目を閉じて「見て」いるのなら
 夢を「聞いて」も「触って」も
 何の不思議もないはずだ
 夢という言葉で
 あなたが音楽や人肌の温もりを
 思い浮かべてもいい
 それにしても
 いずれにしても
 夢はどうやら多くの人にとり
 感じ取られるものらしいのだが

 そしてそれゆえに
 見ただけで終わってしまうもののようでもあるが

 見ただけで終わらせたくないのなら
 夢は蒔くべきものだと思うのだ

 土を耕して
 新しい土の匂いのする場所へ
 一粒ひとつぶ丁寧に
 夢を蒔いて行く
 乾きすぎぬように
 水に溺れないように
 ほどほどの水を与えて

 一粒の夢が芽を出して
 素直に伸びるのを見守って
 ときには守り
 ときには矯めて
 芽が茎になり幹になり
 枝を伸ばして葉を茂らせる
 じっと
 時間をかけて
 その成り行きとともにあることが

 夢を蒔くということであり
 またほんとうに
 夢を見ることであると思うのだ






youngleaves
RICOH GXR P10 3.5 1/810  400 -1.0