あーあダメだよ
そんな格好で
泥んこ遊びするなんて
それは君のお針子の母さんが
分不相応な生地買って
あのブランドのオートクチュールのデザインで
かわいい娘にあつらえた
ふんわり
裾の広がった
まるで花嫁ドレスみたいな
真っ白なヨソユキで
いくら雨上がりの泥の庭
飛び出して遊びたくなるねと言ったって
本気で裸足で飛び出して行くなんて
いまさら慌ててスカートの裾
泥の両手で
腰の高さにまで持ち上げたって
ほらご覧
自慢のバンビのような白いその足も
絹のパンツまでもが泥だらけ
おまけに鼻の頭に泥のキス
そんな小さな子どもだったんだろうな
そこの君
学校帰りの道で会う
この間までは肩ほどまであって
くるりとウナジの側に巻いていた
長めのボブの髪の毛を
どうしたんだろう
失恋でもしたのかな
サガンの悲しみよこんにちはのセシルみたいに
刈り込んで
まるで
ユダヤの民が放りこまれた収容所の昼下がり
寒い街のなか
耳の高さまで巻いたマフラーの
上からやっと覗いた目
誰がすれ違おうと知ったもんかと言いそうに
まっすぐ前だけを見る視線を投げて
ちょっと待って
その真剣な歩みをほんの五分だけ今止めて
一緒にダンスを踊ろうよ
いいやそうじゃない
ダメだよこの僕は
たとえ数分の
風のロンドで君と踊っても
かわいい君には似合わない
荒んだ頬のヤサグレの
風に流されて行く流れ者
そうだ
君にお似合いの
まっすぐな目をした少年を
君に探してくるのが
風の手下の
僕の役目さ
君
かわいいね
古い映画のパンフレットの
中で見つけた
ジーン・セバーグも顔負けだ
でもあの人の波乱に満ちた一生でなく
ごくフツウに幸せな
一生を生きてもらおうと
僕は
まっすぐな目をした少年を
探しに出かけようと
手を振った