友よ | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある



 春まだ遠いこの時季に

 可憐な福寿草でも見たくなったのか

 雪とりわけて多い年であることを

 知らぬはずもない

 たくましく用意周到なる歩行者の

 なにゆえ未だ帰りこぬ


 こころ許せし友なれば

 はるかにはるかに望む

 君のやさしくこぼれる微笑みの

 思いもかけず現われて

 何事もなくおはようと言う朝を


 なにゆえ未だ帰りこぬ

 まだ遠く行く道のはるかにあるを

 忘れるはずのない夢追い人の

 今はいずこに


 閉ざされし雪のおもてに

 横たわって見る空の青さを

 僕に伝えよ

 声あれば

 電光の馬を駆ってでも

 君が姿を見に行かん


 なにゆえ未だ帰りこぬ

 さほどに現世を憎みしか

 さほどに疎むべき日々なるか

 人を愛し人にやさしく生きた者なれば

 君がこの世を疎むなど

 決してありはせぬことと

 僕は信じて疑わぬ


 なればこそ

 なにゆえ未だ帰りこぬ

 その理なさを聴く耳よ

 今はいずこにありて憩うかを

 声なくあるとも

 僕に伝えよ