V for Vendetta っていう映画
ほら あのニンマリ笑ったようで
どこかとてつもなく恐ろしい顔の
道化師みたいな仮面と
騎士の時代に騎士や貴族たちがかぶっていた
シラノ・ド・ベルジュラックみたいな
羽つきのお洒落な帽子
超管理社会と独裁者と秘密警察の出てくる
SFの典型的筋書きをもった
でもなぜだかSFなのに
顔を見せない主人公のVは
何本もの短剣を武器とし
古いものを集めて暮らしていて
エドモン・ダンテスを愛してる
(中学生の時には僕も読んだモンテ・クリスト)
彼の戦いたかったものは
いかにも美しげにとりつくろわれ
皆が同じように生きている社会
それから彼を実験台にして
挙句の果てに大火傷を負わせて
不幸にした科学者や宗教家や政治家たち
復讐心が彼をテロと殺人に駆り立て
今は絶滅した真紅の血の色の薔薇を
復讐相手の死体に残していく
でも同じように不幸を背負った女性に出会い
そのひとがなお人を傷つけまいと
するのに怒り残念に思いながら
仲間にしたいと願いつづける
それがいつしか恋になっても
血の復讐は止められない
でも血の復讐はいつか次第に
その社会システムに皆が逆らって
皆がその社会システムを壊すように
なることを望むようになる
結局すべての復讐が終わるとき
彼も死んでしまうのだが
彼が愛した女性が
最後に国会議事堂爆破のために
大量の爆薬を積んだ地下鉄車両の
発車レバーを引く
それは悲惨なテロになりそうで
嘘で固めた国会議事堂は
見事に崩壊していくが
人々が押し寄せるなか
空には華々しい花火が数多く上がって
新しい時代の幕開けを象徴し
人々は皆
復讐の仮面をいっせいに外し
皆が一人ひとり自分の顔で
花火を見上げているシーンで終わる
(このシーンにだけ
死んだはずのVの俳優が顔を見せる)
僕には怒りがないけれど
もしかしたら
僕のどこかにも
あんな怒りがあって
じっと時が来るのを待っているのだろうか
ピースのフィンガー・サインが
写真を撮られるときの
笑顔の合図みたいに使い古される時代
それが英国首相チャーチルがナチスとの戦いに
勝利するぞという宣言のとき
チャーチルの手で作られたサインだったことを
知っている人がどれだけいるのだろう
そんな世の中で
V for what?
日本は地震と津波がなかったとしたら
今は平和で幸せな国だったのだろうか
生物の同化と異化
多様性のある生き方は健全に保たれているか
大震災のあとTVに執拗に現れては
耳にタコができるほど聞いた
「こだまですか?いいえ、だれでも」の詩人
金子みすずの言った
あの「みんなちがって みんないい」は
息をしているか