詩を捨てて | 不完全な切り紙細工

不完全な切り紙細工

 誰も聴く人がいないのに歌いつづける歌がある
誰も見る人がいないのに踊りつづける踊り手がいる
誰も読む人がいないのに書きつづけられる言葉があって
不完全な切り紙細工を幾つも幾つもつなげていけば
そこに何かの絵が生まれるものと願う鋏がここにある


 君の詩には意味があり
 いや 意味しかないと
 言われたことがある

 詩を意味で書いてはいけないと
 詩は意味などを持つべきでなく
 持つこともできないと

 それはあたかも君の人生が
 意味など持たないのと
 同じでなければならないと

 震える指と揺れる息
 流れる涙こそが歌うのであり
 それらの意味が詩を歌うのではない

 流れる水に文字を書き
 跡形もなく消え去るがままにするなかで
 人を愛せない嘆きそのものが詩であって

 涙を「涙流す」と言葉にし
 とまらぬ震えを「恐ろしい」と言い換えて
 愛なき生を「根無し草」と意味づけたとき
 言葉とともに詩は死ぬのだと

 だから 青年よ
 意味を語るような詩は今ここで
 綺麗さっぱり君の命に打ち砕かせて
 言葉一つなく生きねばならないと

 その生き様のさなかにて
 流れる命の水が現世の岸に打ち当たり
 吐息のごとく跳ねたとき
 自ずから浮かんで消える言の葉を
 お前の息から浮かぶ片言を

 ただひとすくいして居並べて
 意味もなく何の説明もないままに
 一枚の薄い紙片の上に書き留めて
 人に手渡し その人の
 息が微かに揺らぐとき

 ただそのときに
 それだけが
 お前の望む詩になるのだと





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