第6話「水平線の彼方に」



午後4時45分、中村駅、リンリンサイクルターミナルに到着。

余計な寄り道をくったせいで、時間的にはギリだ。

3台の自転車を返却する。

ここから、本日の宿、足摺温泉までは、レンタカーを利用する。

本当は江川崎の5年前の古民家(奈路の家)リターンズをしたかったのだが、予約いっぱいであったため、あえなく断念したのだ。

ここで、僕等はシャツ一枚に水着姿・・・。

着替える所もないし、短パンに似ているため、そのままレンタカー受付に向かう。

こんな怪しい3人組がレンタカーを借りるのも珍しいであろう。

5時に予約を入れてあったため、すんなり受付できた。

ここから、徳永英明スペシャルセレクションを聴きながら、一路足摺温泉へ。

1時間ほど走り、本日の宿、「ホテル椿荘」に到着。

たまたまかもしれないが、海に面した部屋ですごく景色がキレイであった。

料理もボリューム満点で、3人の大人が(ビールを飲みつつであるが)少し残さざるを得なかったということからも量の多さを想像していただけるであろう。

この夜は、料理を食べつつ、お酒が入り、話が弾み、なぜかお互いの恋愛感について熱く語り合っていた。

程よく酔いもまわり、自然に皆就寝。



翌朝、朝風呂に入り、朝食もいただき、ホテルをチェックアウトする。

値段的にも安かったし、若い人にも十分お勧めできるホテルだ。

さて、車を走らせ、近くの足摺岬へ向かう。

車を止め、岬の先端へ歩き出す。

そこには、絶景のパノラマが広がっていた。

空の青。海の青。灯台の白。茂みの緑。

目に飛び込んでくる全ての色が美しい。

彼方まで広がる海は僕等をまるで包み込むかのようだ。

しばし、その景色に酔いしれる僕等。

記念写真を撮り、その場を後にする。

そして、近くのジョン万ハウスに入り、幕末の鎖国時代において活躍したジョン万次郎について勉強し、足摺温泉郷を出発する。

レンタカーは高知駅前店で乗り捨てるため、今日は小田和正のニューアルバム「そうかな」を聴き、歌いながら高知駅を目指すのである。



第7話につづく・・・。
第5話「いぢわるばあちゃん」



時刻は3時30分。

雨は少しは弱くなったが、依然降り続いている。

本来ならば、雨がやむまで雨宿りをするところであるが、僕らは自転車を中村駅で5時までに返さなくてはならなかった。

これ以上休んでいては遅れそうだったので、仕方なく雨の中を水着のまま出発する。

30分ほど走っただろうか。ようやく雨が止んだ。

最後の長い峠をやっとのこさで越え、目指すは、中村駅。

さぁ、ゴールはもうすぐだ。

久しぶりの運動らしい運動の為か、体が重くなってきた。

ラストスパート。

と、いきたいところだったが、またしてもアクシデントだ。

それは、中村市内に入り、信号のある交差点で、中村駅は右か左かまっすぐか?を判断しなければいけなかった。

そこで、ちょうどよく前を自転車に乗ったおばちゃんが通りかかったので、僕等は道をたずねることにした。

以後、おばちゃんとのやりとり。

僕等「すみません」

おばちゃん「(不機嫌そうに)あん?」

僕等「(あくまで物腰低くで)中村駅はどっちですか?」

おばちゃん「(さらに不機嫌そうに)あん?」

僕等「(こいつ聞こえてんのかと若干イラっとくるが、まだ物腰低く)中村駅は…」

おばちゃん「(うざそうに)あっち」

進行方向に向かって左を指差した。

確かに、左を指差した。

「ありがとうございます」

いったい何なんだ?あのおばちゃんは・・・

もう少し、きちんと答えてくれてもいいのに・・・

若干不安を抱きつつ、左に折れ、道を進んでいく。

しかし、どうも市街地から明らかに離れているように人家が減っていく。

これは、おかしい。

ここで、前を歩くおじいちゃんにさらに道をたずねる。

「すみません、中村駅はこっちでいいですか?」

「中村駅は反対じゃ。信号を越えてさらにまっすぐ行って、商店街を左折したら(略)」

3人「えーーーーーー!」

そうだ。

あのばあちゃんは、逆を教えやがったのだ。

僕等は、引き返し、道を間違えて教えやがったばあちゃんを緊急指名手配し、彼女の行方を追った。

しかし、見つかるわけもなく、仕方なく追跡を諦め、やりきれない思いで中村駅を目指すことにする。



第6話につづく・・・。
第4話「嵐の前の静けさ」



江川崎駅でリンリンサイクル(レンタサイクル)を借りる。

このリンリンサイクルは、下流の中村で乗り捨て可能なのだ。

でも5時までに返さないと怒られるので、ちょい急ぎ気味で出発する。

江川崎~中村は約40キロ。

高低差は約400メートル。

ゆるやかな下り坂が多い。

四万十川の雄大な景色の中を、3台の自転車が進んでいく。

お盆ということもあり、やはり行き交う車は多いようだ。

車で移動するのは簡単なことだ。

でも、車では味わえない空気、風がここには、ある。

途中、極度のヘビ恐怖症のよーべ氏は、道を横断するミニ蛇にビビったりもしていた。

5年前、同じように僕等は、この道を通った。

何か不思議な感覚。

5年前と景色は変わらない。

変わったのは、僕等と僕等を取り巻く環境。

まるで、5年前にタイムスリップしたかのよう。

ああ、あの頃に戻りたいな・・・。

自由を弄んでいたあの頃に。

あれから色々あったよなぁ。

5年間の思い出に思いを馳せつつ、僕等は下流の勝間沈下橋にやってきた。

四万十川にかかる1本の沈下橋。

欄干がない。

洪水になったらその名のとおり「沈下」する橋だ。

「このはしわたるべからず」

まさしくこの橋じゃないか。

車で渡る際は、譲り合って、真ん中を通る必要がある。

夜中に通るのは危険である事は、言うまでもないだろう。

ここで、少し泳ぐことにする。

水は、やはり渇水の影響か、やや少なかった。

5年前は沈下橋から飛び降りたりもしたが、今回は真ん中でも足がつく水量であるので、断念する。

天気は曇り。雨が降る気配は全くない。

しかし!

それは、突然やって来た。

僕等が川に入って5分後。

なにやら上流の山が白くなっている。

ん?雨か?と思った瞬間、ものすごい夕立ちに見舞われた。

まさに、バケツをひっくりかえすかのような雨だ。

山の天気とは本当に恐ろしいものだと痛感。

開いた口が塞がらない僕等。

しかし、そんな僕等とは裏腹に非情にも全く威力を弱めない夕立ち君。

一瞬にして僕等は、スコールの中に取り残されてしまったのだ。



第5話につづく・・・。



写真は、雨が降る15分ほど前に撮りました。