彼らはなにをしているかわかっている | へっぽこハンター日記

へっぽこハンター日記

新米ハンターのコトワがハンティングした音楽、映画、書物や芸術一般について語ります。

『関心領域』観ました。

公開中につき、ネタバレのないようにします。

 

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1945年ポーランド。

アウシュビッツ強制収容所の責任者・ルドルフ(クリスティアン・フリーデル)は、

収容所の隣に家を構え、家族とともに暮らしていました。

 

家のことは妻のヘートヴィヒ(ザンドラ・ヒュラー)が取り仕切り、

庭では美しい花や野菜を育て、

訪ねてきた友人や母をもてなしたりして過ごしていました。

 

ある日、ルドルフに人事異動の辞令が下り、

ヘートヴィヒはせっかく整えた家を離れたくないとルドルフに抗議します……

 

 

アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞して、

ジョナサン・グレイザー監督がガザのパレスチナ人の皆さんを助けるべきというスピーチをしてから、

絶対観に行くぞと思っていた映画です。

 

これも歴史映画になるのだろうか。

あの家は本物だそうですよ……

 

“The Zone of Interest(関心領域)”とは、

ナチスがアウシュビッツ強制収容所周辺の地域を指して使った言葉だそうです。

 

焼却炉の効率化について話し合ったり、

異動にまつわる権力争いなんかが起きていることから察するに、

たしかにナチスにとって重要な施設だったんでしょうね……

 

 

このポスターはよくできてるなと思いました。

家の庭で遊ぶこどもたちや家族のようすはふつうでも、

その背景は黒塗り。

 

映画には直接的には残酷なシーンは出てきませんが、

悲鳴や怒号、銃声が聞こえ、

焼却炉からは黒い煙が上がっている……

 

 

そして、映画を観る前までは、

彼らは自分たちの暮らしだけを見ていて、

その隣で何が起きているかに無関心なのかなと思っていたんです。

 

でもそうではなくて、

彼らはなにをしているかちゃんとわかっていました。

 

ちゃんと権力を振りかざしていたし、

アフタヌーンティーを楽しみながら、

ユダヤ人の皆さんから奪ったダイヤや毛皮のコートの話をしてた。

 

ヘートヴィヒは明るく振るまうけど、その表情は危うくて、

常に情緒不安定。

 

そらそうだよな、お隣で人を燃やしてるんだぜ。

正気でいられるほうがどうかしてる。

 

この家に遊びにきて、

「あんたは恵まれてる」とヘートヴィヒに言っていたヘートヴィヒの母が、

黙って帰ってしまうのも、

象徴的でした。

 

戦時中だから、

ちゃんとした暮らしができているこの一家はたしかに恵まれてるかもしらんが、

その代わりに手を血に染めてるんです。

夜も絶えず鳴り続ける銃声に、

それを痛感したんでしょうね……

 

静かで、説明がなくて、観ている人に感じさせる演出で、

恐ろしかったです。

 

一度こんなことに舵を切ったら、もう誰にも止められない。

こんな非人道的なことは許されないと個人的には思っても、

流されるしかない……

 

その内省を覆い隠す差別意識もちょいちょい現れて、

こんな暮らしをしていたこどもたちはその後どうなったんだろうなと思いました。

 

 

日本も同じように道を踏み外し、

たくさんの国の人々に迷惑をかけ、

自分の国の人々も苦しめた。

繰り返さないためには、そんな政府にしないこと。

差別にも戦争にも、

外交努力でなく軍拡でなんとかしようとする姿勢にも、

ちゃんとノーを突きつけましょう!

へっぽこハンターコトワでした!

("`д´)