100回髪を梳かしてもらってやっとはじまる | へっぽこハンター日記

へっぽこハンター日記

新米ハンターのコトワがハンティングした音楽、映画、書物や芸術一般について語ります。

『コット、はじまりの夏』を観ました。

公開中ですが、ほんのりネタバレあります。

 



1981年、アイルランドの田舎町。

貧乏子だくさんの家族の中で、

大事にされずに育った少女・コット(キャサリン・クリンチ)は、

母がお産を控え、

しかし学校が夏休み期間に入るため、

親戚のショーン(アンドリュー・べネット)とアイリン(キャリー・クロウリー)夫妻の農場に預けられることになります。

 

ふたりの愛情と優しさを受けて、

農場で丁寧な暮らし。

コットははじめてこどもらしい幸せを感じることになります……

 

 

 

ツイッターで告知を観て気になっていたアイルランド映画です。

出町座さんで観てきました。

 

想像とはちょっとちがったけど、

興味深い映画でした。

 

“Cáit”でコットと読むそうで、

アイルランド語は難しい!

 

 

コットの家族についてなんですが、

昔はこういう家庭を見て、

夫婦がいがみあってるように見えても、子だくさんだから、

まあ夫婦仲は悪くないのかな、というぐらいに思ってたけど、

最近はこういうケースはハラスメントの一種だという話を聞きまして。

 

夫が避妊しないというモラハラの一種だそうで、

この家庭を見ていたら、

なるほど……と思いました。

 

夫は働かず、ギャンブルをして暮らし、

お金がないのにプライドだけはあって、

周囲の人には働いていると嘘をつく。

 

妻が家事育児に加えて家業の農業をすべてしていて、

キャパオーバーなので、常にイライラしている。

こどもは5人くらいいるうえに、さらに現在妊娠中。

こりゃ、ダメだ……

 

で、コットがとりわけこの家で浮いているのは、

たぶんほかの子たちより少し賢くないので、

ほかの家族から放っておかれやすいから。

背は伸びて、顔立ちは少し大人びているのに、

口を開いたら声や話しかたは幼い。

 

こういう女の子は、はやくから、

この父親のようなひどい男に遭いやすい……

 

登場からかなり将来に不安のあったコットが、

アイリーンとショーンの家に行って、

“ふつう”のこどもの暮らしを体験していくのが、

とても良かったです。

 

 

家の酪農の手伝いも、必ず大人がついていて、

ちゃんと“お手伝い”の域に留まっている。

 

上手にできたら誉める。

体調が悪そうなときは心配する。

当たり前のことなんですけどね……

 

うまく言葉にできないので、黙りこみがちなコットに、

「沈黙は悪くない」と教えるショーン。

 

僕はガチの文系なので、

言いたいことはちゃんと言葉で伝えないと

伝わらないよと説教してしまいがちなんですが、

そういうのが苦手な人もいますもんね……

 

 

眠っているコットに、

「あなたがうちの子ならよそに預けたりしないのに」と呟くアイリーン。

コットは実際は起きていて、この言葉を聞いています。

こういう、隠れた善意を目の当たりにすると、

その人への信用度が上がるよね。

 

 

象徴的だと思ったのは、

アイリーンがコットの髪を梳かすシーン。

なぜかアイリーンは櫛を入れる回数を数えながら髪を梳かしていました。

100回。

100回髪を梳かしてもらって、

やっとコットのこどもらしい生活がはじまる。

 

街に買い物に行ったときのショーンの、

「甘やかすために連れてきた」も良いよね~!!

 

コット自身が何を好きで、

どういうことがしたいかとか、

今まで誰も気にかけなかったし、

コット自身もそれを感じたことがなかったはず。

 

やっとここからはじまるんだろうと思いました。

 

原題は『An Cailín Ciúin』、

これはThe Quiet Girl、

つまり、「静かな女の子」という意味だそうですが、

それよりも“はじまりの夏”のほうがふさわしい気がしました。

 

 

正式に養子縁組みしてもらって、

これからは幸せになるだけ!

というエンディングだと思うことにしてる!

ヨロシクです!

へっぽこハンターコトワでした!

(^-^ゞ

 

期せずして、こどもの日にふさわしい映画かも!

(^-^)