オーケストラ千里山第25回演奏会 | youtubeで楽しむクラシックと吹奏楽

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6月11日(日) ザ・シンフォニーホール(大阪)

 

<出演>

指揮:井村 誠貴

ソプラノ:坂口 裕子

アルト:福原 寿美枝

合唱:オーケストラ千里山特別合唱団

 

<曲目>

マーラー:交響曲第2番「復活」

 

個人的な話題から始めて申し訳ないが、筆者はこの曲の実演に接する機会をことごとく逸してきた。2003年の大植英次の大阪フィル音楽監督就任記念の演奏会では、持病の椎間板ヘルニアが悪化して直前に入院。また、同じ組み合わせによる新フェスティバルホールの杮落し公演では、チケットの発売時期がちょうど諸々の出費がかさむ時期に重なり、あれよあれよという間にチケットは完売となった。そのような筆者にもようやくこの曲をナマで聴く機会が巡ってきたのだ。演奏は関西のアマチュアオーケストラの中でも定評があるオーケストラ千里山。プロのような演奏は望めなくともそれなりの聴き応えを得られるはず。そのような期待を胸に会場に向かった。

 

この演奏会を知ったザ・シンフォニーホール発行のパンフレットによると、この日のために実に5年も前から綿密に計画を立ててきたとのこと。大フィルのように専属の合唱団があるわけでもなく、また合唱団をそろえるにしてもある程度の水準に達している人を集める必要があり、曲の練習以外の部分でも相当な苦労を要したはずだ。その甲斐あって、関西の合唱関係者の尽力により、ステージ(といっても手狭なシンフォニーホールではオルガン席になるのだが)には堂々たる規模の合唱団が並び、視覚的にも迫力十分だった。

 

実際に演奏が始まると、やはりこの曲は相当な難曲だということを思い知らされる。日頃ディスクなどで何気なく聞き流しているような部分でも、実際に演奏するとなると各々の奏者が正確に弾くだけでも大変なのに加え、それをさらにアンサンブルを整え、音の綾として織り成していく作業はもっと大変なのだ。危うい場面はいくつかあったものの、冷静な指揮者のタクトの下、決して崩壊することなく音楽は進行していく。しかし、不思議なことに、そのような技術的な危うさを脇に置いてでも、なぜか心にひしひしと迫ってくる場面が時々現れ、不覚にも(失礼!)目頭がウルッとなるのだ。やはり、団員及び関係者の長年の悲願がこの日の演奏会として結実したわけで、その何物にも代えがたい思いが音に現れ、それが心を打つのだろう。

 

それを如実に感じたのが第4楽章のアルト独唱が入ってきて以降だ。難所続きの長丁場の折り返しを過ぎた安堵感からか、それまでにみられた極度の緊張からくると思われるやや硬直した表情が和らぎ、少しずつこのオーケストラの本領が現れ始める。そしてアマオケとしてはなかなか充実した響きのフィナーレへ。オーケストラだけでなく合唱団からも、「これが演奏したかったのだ!」という気持ちがひしひしと伝わってくる。ここまで来るのに練習だけでなくそれ以外にも有形無形の苦労が相当あったことだろう。そのような奏者一人一人の思いが音楽に昇華され、技術を超越した何かが確実にそこにはあった。同じことを感じ取った人は多かったようで、実際に指揮者がタクトを振り下ろすと「ブラヴォー」の嵐。この「無謀」とも言われかねない企画のために、それぞれのメンバーが己の限界と向き合い、この日の演奏として結実したのだ。このことは客席にいた我々にも、「やればできるのに、どうせ自分には無理だからと最初から自己の可能性を閉ざしてはいまいか」という問いを突き付けられたように思えてならない。この難曲に果敢にチャレンジした(そして見事に完走ならぬ完奏した)オーケストラと合唱団と関係者全員に拍手を送りつつ、これから先の人生に挑んでいく勇気をもらえた演奏会であったことを記しながら、記事を締めくくりたい。