醒めた狂気◇ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番から(ヘヴィメタル版) | youtubeで楽しむクラシックと吹奏楽

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ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲第8番から(ヘヴィメタル版) 

コナー・ギャラガー(e-g)

 

去年のちょうど今頃、大阪フィルの定期の指揮台に登場したのが古楽出身のジャン=クリストフ・スピノジ。意外にも(というより近年では古楽出身だから必ず古楽をやるというわけでもなくなったが)彼が取り上げたのは前半がラヴェルの2曲と後半がショスタコーヴィチとプロコフィエフだった。そしてショスタコーヴィチからは「室内交響曲」が演奏された。当時の記事にも書かせていただいたように、この曲は弦楽四重奏曲第8番を弦楽オーケストラ用にアレンジしたもの。この曲全体を支配する何とも陰鬱な雰囲気がこの梅雨の季節感にピッタリだなーと思いつつ聴いていたものだった。

 

というわけで一年後の同じ季節に、今回はこの作品のヘヴィ・メタル版を取り上げてみたい。演奏しているのは先般の「交響曲第10番」の見事な演奏が記憶に新しいコナー・ギャラガー氏。ここでも圧倒的な腕前を駆使し、ショスタコーヴィチの真髄に迫る演奏を行っている。

 

しかしまあ、「これがオリジナルなんじゃないの?」と思わせる説得力にはただただ圧倒させられるのみ。そもそもがショスタコーヴィチとヘヴィ・メタルがこんなに親和するとはいったい誰が想像できただろうか。さらに、筆者も経験あるからわかるが、指揮者だったり、他の演奏者という「よすが」の全くない個人での多重録音は出やタテ線をそろえるのが非常に難しいものだ。しかし、そこはやはりプロのミュージシャン。決してズレたりすることなく完璧に仕上げており、驚嘆するより他ない。そして、このパーフェクトな演奏ゆえに、ショスタコーヴィチの音楽がはらむ「冷たく醒めた狂気」がヘヴィ・メタルの音楽語法によって灼熱の狂気に変換され、それが白日の下に晒され、聴く者を震撼させるのだ。