昨日に続き、今回も「世にも奇妙な物語 ‘24秋の特別編」のあらすじ・感想・考察

を書きたいと思います。

 

今回は「人類の宝」という物語について書きます。

 

【あらすじ】

フリーターの佐倉エイスケ(高杉真宙)はアルバイトを転々とし、

グラフィティアートを描きながらその日暮らしをしていた。

 

そんなある日、いつものようにグラフィティアートを描いていると、

エイスケの作品にほれ込んだ世界文化遺産保全機構(WCCO)の三嶋左近(新納慎也)が現れ、「あなたはまさに人類の宝だ!あなたを保護させていただきます」と言って

エイスケを連れ去った。

 

そこは、ほとんど家具のない白い部屋で、

エイスケは何が起きているのかわからず呆然としていた。

 

エイスケは外に出せと三嶋に言うが、

それはエイスケをあらゆるリスクから守るためであり、

外は危険だらけである一方ここにいれば安全であり、

いずれその幸せに気づくときが来ると言って部屋を出た。

 

エイスケはいつもと全く違う環境に馴染めず、絵を描くこともできず、

高級な食材を出されても口にしようとしなかった。

 

エイスケは部屋から脱出する方法がないかと見まわしてみたが、

壁や窓も頑丈でとても壊せるようなものではなかった。

 

すると、どこからか女性の歌声が微かに聞こえ、誰かいるのかと思い、

通気口から呼びかけてみるとミハル(恒松祐里)と名乗る女性から返答があった。

ミハルも同じように連れ去られて部屋に入れられており、すでに3年が経ち、

自分以外にも100人くらいいると言った。

 

エイスケはそこに連れて来られたのは自分だけではないと知り、

少し救われたような気がしてほっとするが、

通気口で会話をしていることに気づいた三嶋はミハルを部屋から連れ出し、

エイスケの部屋に連れてきた。

 

三嶋はミハルが大ヒットした覆面アーティストであり、

ミハルとの交流を許す代わりに絵を描けと言った。

 

エイスケは絵を描き始めた。

そして、部屋を出るためのカードキーをこっそり盗んでいたため、

それを使って部屋から脱出し、ミハルの部屋に行って絵を見せた。

 

一緒に建物を出ようと言ってミハルを連れ出すが、

出口のところでミハルは出たくないと言った。

 

なぜ出ようとしないのかと不思議に思っていると、そこに三嶋が現れ、

ミハルも自分たちの協力者であり、監視の目を掻い潜り、

恋愛ドラマのような展開になったのも、仕組んだ罠だったことを話した。

 

人の心を弄んで面白いかとエイスケは激怒するが、

三嶋はそれも立派な保護活動であると言った。

 

エイスケは外に逃げ出し、WCCOの従業員が後を追おうとするが、

三嶋は自分に任せろと言い、敢えて追わなかった。

 

エイスケが公衆電話から警察に通報していると、そこに三嶋が現れた。

もうすぐ警察が来ると言うと、三嶋は「WCCOのことは警察も知っている」

と言った。

すると、そこに黒い車が現れ、中から銃を持った数人が降りて来て、

エイスケを車に乗せて連れ去った。

 

警察が助けてくれたのかと思ってエイスケは一安心するが、

降ろされたところで絵を描くように脅され、銃を突き付けられた。

どうやら警察ではなかったようである。

 

エイスケが絵を描いていると、再び三嶋が現れ、

彼らは文化人の密猟をする組織であると言い、

彼らに脅されるのと三嶋に保護されるのとどちらがいいか、選択を迫った。

 

保護を求めてくれたら助けると言われ、

命の危険にさらされていたエイスケは保護を求めると、

三嶋はそこにいた密猟組織の数人をあっという間に全滅させ、エイスケは救われた。

 

半年後、オークションでエイスケの絵は2億ドルと査定され、

エイスケの作品がきっかけで紛争が停戦したこともあり、平和にまで貢献していた。

 

すると、通気口越しに久々にミハルの声が聞こえ、

今度はミハルの方から一緒に出ようと誘った。

成功したことを知ってすり寄って来たのだと思ったエイスケは断り、

ミハルは1人で出た。

 

ある日、三嶋のエイスケへの態度が以前とすっかり変わっており、

なぜかと思っていると、三嶋はエイスケの活躍が予想を超えてしまい、

今ではグラフィティアートに興味を持つ人が増えすぎたため、

これ以上作品を出すなと世間から言われていると話した。

 

保護すると言っていた最初の話と違うではないかとエイスケは反論するが、

文化人の生態系を破壊する外来種のブラックバスのようなものであると言われ、

冷凍保存されてしまった。

 

【感想・気づき】

本作は、貴重な才能を世の中から無くさないよう、

保護して恵まれた環境を与えるという組織が設定されていました。

 

芸能人やスポーツ選手のような人は、確かに極めて希少な才能を持っており、

一般人と同じように外の世界で生活していると、場合によっては命を狙われるなど、

危険な目に会うことも避けられません。

 

三嶋が言っていたように、環境が与えられなかったために日の目を見なかった芸術家も多く、そのような人を生み出さないために保護するという意図はよくわかります。

 

しかし、それで才能が開花して大成功し、

世間から注目されるようになったとしても、

本人がそれで幸せかどうかは限りなく疑問ですね。

 

本作のように、自由を奪われて監禁され、

絵を描きたくない日でもまるで脅しのように強制され、

そのような日々になっても活躍したいかと問われれば、

多くの人は肯定しない気がします。

 

エイスケの芸術も、ミハルの歌唱も本来は好きでやっているはずですが、

それが重いノルマのようになってしまっては次第に楽しくなくなってしまいます。

 

本作は「幸せとは何か」という大きな問いを視聴者に投げかけており、

近年増えている、大ブレイクしている芸能人がなぜか引退してしまったり、

場合によっては自殺してしまったり、

そのようなことがなぜ起こるのかを少し解き明かしたような構成になっていました。