6/8にフジテレビで放送された「世にも奇妙な物語 ‘24秋の特別編」

を録画していたのですが、本日それを見ました。

 

今回も4作品で、長さはそれぞれ30分弱でした。

本日から4回にわたり、1日1話ずつ各物語のあらすじ・感想・考察を

書いていこうと思います。

 

今回は「追憶の洋館」という物語について書きます。

 

【あらすじ】

雨霧梢(若村麻由美)は山奥の小さな滝を見に行った。

その後、濡れた道を歩いているときに足を滑らせて転倒し、

木に頭を打ち付けて意識を失ってしまった。

 

しばらくして目を覚ますと、そこは古い洋館のベッドの上で、

足を滑らせたときにできた怪我の手当てがされていた。

 

なぜ自分がそこにいるのか状況をつかめない梢が部屋を出ようとすると、

星野明と名乗る青年(ジェシー)が現れた。

 

彼は、「手当をしたのは僕たちだ」と告げ、梢をダイニングルームへ連れて行った。

洋館には明以外にも、季節感がバラバラな服装をした老人(山田明郷)、

マダム(山野海)、女子高生(池田朱那)がいた。

 

すると、なぜか初対面のはずの彼らが梢の名前を知っていた。

呼ばれた名前は違うと梢は否定するが、

名前だけでなく自分が何者かも全く思い出せず、答えられなかった。

どうやら頭を打ったことで記憶が失われてしまったようであった。

 

ところが、「反抗期はあったか?」という質問をされ、

人並みにはあったと答えると、「親に行った一番酷いことは何?」と聞かれ、

それにははっきりと答えられことから、

覚えている事柄もあることに違和感を感じた。

 

梢の記憶が失われていることに気づいた明は、1冊のノートを渡し、

思い出したことがあればそれに書くよう勧めた。

 

しばらくして、明がベランダで絵を描いている様子や、些細な仕草を見るうちに、

梢はふと明と自分が以前会ったことがあるような気がした。

 

「思い出す光景や距離感から恋人としか思えないが、そうではないのか」と聞くと、

会ったことはないと否定されるが、明は「それ以上かもしれない。最も近くて最も遠い存在」となんだか意味のありそうな表現をした。

 

明が何かを隠しているのだろうと思った梢は、

知っているのであれば教えてほしいと頼むが、

「自分で思い出す必要がある」と言って教えてくれず、別室に入ってしまった。

 

明以外の3人を見ても、梢は断片的に心当たりのあるシーンが浮かび、

どうやら関わったことのある人のようだった。

 

ただ、誰に聞いても教えてもらえず、

食事をしているときでも「時間が来た」と言って2階の部屋に行ってしまった。

 

皆が入って行く部屋に何があるのだろうと思った梢は、その部屋のドアを開けた。

すると、女子高生が血を流して死んでおり、

驚いたかと思うと梢は再び部屋の外におり、無傷の女子高生が出てきた。

 

再び部屋に入ると、そこにはテーブルがあり、血の付いたハンマーが置かれていた。

そのとき、女子高生がハンマーで殺害されるシーンが浮かんだ。

 

その後も部屋に入るたびに置かれているものが変わり、黒電話、猟銃、

バスタブがあった。

 

それらは梢がマダム、老人、明を殺害するのに使った物のようで、

彼らと自分がどう関連していたかが判明した。

 

自分が4人も殺害したことが信じられず、怖くなった梢は洋館を飛び出すが、

洋館の外には4人が待ち伏せしており、慌てた梢の様子を見て、

記憶が戻ったことに気づいたようだった。

 

リビングに戻って何を思い出したのかと問い詰められた梢は、

思い出したことを正直に話した。

 

ところが、明は「あなたのような華奢な女性が私を殺せると思うか?」と質問し、

まだ思い出していないことがあると言った。

 

梢はふと小説家として自分が取材を受けたことや、

自分の書いた小説で設定した登場人物のことを思い出し、

彼らが作品中の殺人の被害者であることにも気づいた。

 

彼らは小説が読まれるたびに何度も殺されるのだと不満を口にし、

梢にも作品の一部になってもらうと言い出し、明は梢の首を絞めて殺害した。

 

梢の死後、「追憶の洋館」という小説が出版された。

そこには自分の書いた小説の登場人物に殺害される小説家が描かれており、

まさに梢の経験そのものであった。

 

【感想・気づき】

今回の世にも奇妙な物語は「運命」がテーマで、

各作品の登場人物が運命に抗おうとする様子が描かれていました。

 

本作では主人公の梢が記憶障害となり、洋館に連れて来られてしまいますが、

そこにいる人たちも自分のことを聞かれても教えてくれず、

はぐらかされてしまいました。

 

私が最初に見たときは、そこは同じように記憶を失った人が送られる場所かと思い、

各自がどのような境遇で記憶を失ったかが後から明かされると予想しました。

 

しかし、実際は全くそうではなく、梢の本当の被害者でもなく、

小説の中に登場する架空の人物だったという結末でした。

 

また、明が自分との関係性ことを聞かれたときに答えた、

「最も近くて最も遠い」というのは、

小説家にとっての登場人物は頭の中で思い浮かべるという意味で近く、

実在しないから会えないという意味で遠いということだったようです。

 

本作を見ると、殺人事件の物語を書く小説家は、自分が罪を犯しており、

いつか登場人物に報復されるのかと思ってしまいますが、

それはあくまで本作の設定であり、実際にはありませんね。

 

ここでいう「運命」とは自分が亡くなって小説の中に入ってしまうことであり、

どうやらそれには抗えなかったようです。

 

実在しない架空の人物として作品中に描いた人々に、作家自身が会ってしまい、

最後は作家自身が巻き添えにされ、人々に読まれる側になってしまう、

という展開がなかなか面白かったと思います。