かつて、受験界に「四当五落」という言葉があったのをご存知でしょうか。

これは、

 

「睡眠時間が4時間の人は合格(当)し、5時間も寝ているようでは不合格(落)になる」

 

という意味です。

つまり、「寝る間も惜しんで勉強するのが良い」ということです。

 

しかし、睡眠の研究が進んでいる現在では、この考えは全く的外れであることがわかっています。

睡眠時間を削ると記憶力、集中力が落ち、勉強しても定着しません。

最近の受験生はこの事実を知っているため、東大に合格するような受験生は睡眠を削って勉強したりはしません。

 

しかし、日本の企業の労働状況を見ると、まるで未だにこの「四当五落」という言葉を信じているかのように、従業員に睡眠時間を大幅に削って働かせている職場があります。

 

昨日ご紹介した「ストレスフリー超大全」に記載の通り、

最新の研究によると、

睡眠時間6時間以下の人は、がんが6倍、脳卒中が4倍など、様々な病気の発症率が飛躍的に上がり、死亡率が5.6倍となります。

 

睡眠不足による悪影響としては、他にも記憶力、思考力、集中力の低下など数えきれないほどあります。

 

ここで、簡単な計算をしてみましょう。

ある仕事に関わり始めたのが30歳のときだとしたとき、

 

①1日8時間の労働で睡眠を十分に取って健康に留意して働き、65歳の定年退職まで働き続けられた人

②1日11時間の労働で睡眠を削って働いた結果、病気になって50歳で亡くなった人

 

の2者で、社会人として働いている間にこなせる仕事量の総和を比較したいと思います。

 

年間の仕事量の比率は1日の労働時間と同じ8:11とします。

 

①の場合

8(年間の仕事量)×35(勤続年数)=280

 

②の場合

11(年間の仕事量)×20(勤続年数)=220

 

これを見てわかる通り、睡眠時間を削って長時間働いた②の方が、こなせる仕事量は少なくなっています。

 

さらに、年間の仕事量の比率を単に1日の労働時間の比率と同じにするのは正確ではありません。

睡眠不足によって集中力が低下するため、1時間あたりにこなせる仕事量も減ってしまいます。

仮に①の場合を1、②は0.8とすると、

②の仕事量は

220×0.8=176

となり、①の3分の2程度になってしまいます。

 

以上より、睡眠時間を削って働くことは愚の骨頂といえます。

「社会に貢献するために睡眠を削って働いている」ではなく、

「睡眠を削ることで却って社会に貢献できなくなっている」のです。

 

長時間労働による悪影響は、

 

(従業員側)

・労働時間が長いので、仕事以外のことができない

・睡眠不足で病気になり、早死にする

・仕事の質が落ちるので、働いても社会に貢献できない

 

(企業側)

・従業員に残業代をたくさん払わなければならず、出費が増える

・質の高い製品やサービスを提供できず、売上げが上がらない(収入が減る)

 

となり、両者にとって百害あって一利なしです。

 

睡眠を削って働き続けた先に待ち受けているのは、成功・貢献・幸福などではなく、早死にという名の悲劇です。

 

日本の労働生産性は先進国で最下位となっており、このままではますます他国に差をつけられてしまうのではないでしょうか。

 

これほど研究が進んでいる現在においても、なぜ日本の企業では「四当五落」のような働き方がなくならないのか、不思議でなりません。

やはり「睡眠は最も優先順位の高い業務である」という意識が1日も早く全企業において徹底されなければいけません。

 

もし、極端な話、残業がなくなって全員が定時で帰れる世の中になれば、

上記の悪影響とは逆に、

 

従業員は、

睡眠が十分に取れて健康で長生きでき、仕事以外のことにも時間が使えて人生が充実する

企業は、

残業代を払わなくてよいので出費が減り、従業員が質の高い仕事をしたことで売上げが伸び、収入が増える

 

という好循環に入っていけるのではないでしょうか。