今、新保守主義=ネオ国家主義者たちが、世界中で反自由主義のシナリオを広めています。
・・・新しい形の保守主義は、ロナルド・レーガンやマーガレット・サッチャーの時代に広まっていた保守主義からの根本的な脱却を示しています。レーガン大統領のような晴れやかな楽観主義や米国を「丘の上の輝く都市」という見方ではなく、トランプ氏の言うように衰退と「米国の大虐殺」を見ている。力強い国際主義の代わりに、外国の戦争や多国間組織に対する深い懐疑があります。その経済政策は、大企業に懐疑的で、大規模な福祉国家を受け入れることに前向きで、労働者階級の苦境に懸念を持ち、保護主義を通じて国内産業と雇用を維持することに熱心であるなど、左派の考え方とより一致している。(The Economist February 17th 2024)
私はトランプが地政学リスクの高まる世界で権力を握ったことを重視し、第2次朝鮮戦争と核兵器の使用についてThe Economistのシナリオを拙著『ブレグジット×トランプの時代』に紹介しました。また、台湾海峡における米中の軍事衝突に、プーチンが停戦合意のため習近平とトランプとの仲介を申し出る、というEdward Luceの寓話も紹介しました。
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戦術核兵器の使用に関するNYTのOpinionと新しいナショナリズムNeoNatに関するThe Economistの記事を読んで、地球に拡散する非常に危険な化合物を想いました。
・・・かつては現代の紛争では考えられなかった核攻撃の可能性が、冷戦後のどの時期よりも現在では高まっている。
・・・プーチン氏がウクライナ――どこの核の傘にも覆われていない非核国――に核兵器を投下したら、どうなるだろうか。
・・・米諜報機関は、ウクライナの戦闘機がロシアの防御をなんとか突破し、ロシア黒海艦隊の本拠地である占領下のクリミア半島へ進軍していた場合、ロシアが戦術核を発射するかどうかはコイントスに帰着すると推定した。
NYTのTHE BRINK by W.J. Henniganには、1つの戦術核兵器をロシア軍が使用し、それが核保有諸国の全面的な核戦争にまでエスカレーションする話がイラスト動画や録画によって示されます。
そのリスクは推測ではなく、諜報や電話会談、記者会見、外交圧力によって明らかに膨張し続ける危機でした。人類は今、広島・長崎の次の核兵器使用に傾く、深淵の前に立っているようです。
・・・バイデン氏の側近らはほぼ1週間にわたってホワイトハウスに徹夜で高官レベルの対話を調整し、ウクライナ領土内での威力数キロトン以下の小型核爆発という最悪の事態に備えた計画を立てた。
・・・中国、インド、トルコを含む数カ国の指導者らがプーチン氏政府に核攻撃を強行した場合の潜在的コストを説明する努力も加わった。
ロシアが不利な戦況を転換するために戦術核を使用するなら、世界の戦場と衝突の発火点が全く違う条件で再編され始めます。朝鮮半島、台湾、中東のイスラエルやイラン、トルコは間違いなく影響を受けます。
ウクライナの穀物は被爆し、世界の食料供給の逼迫や、穀物輸出の禁止が連鎖するだろう、と予測します。
・・・この攻撃は、汚染された可能性のある作物を封じ込めるための農業禁輸措置を促し、中東、南アジア、北アフリカ、西アフリカに広がる食糧不足のドミノ効果を引き起こした。
・・・恐怖は汚染そのものと同じくらい危険です。地域社会の脅威が現実であるかどうかに関係なく、放射線被曝とその長期的な影響に対するパニックにより、人々は家から追い出されます。国境を越えるとすぐに人が溢れてしまいます。
・・・より広範な核戦争に対する不安がたちまち高まり、ニューヨーク証券取引所が暴落した。ロックダウン命令により食料品の買い占めが起こり、市場の棚がきれいに一掃される。
・・・推定2,700万人が即死し、2年以内に2億5,500万人もの人が餓死する可能性がある。
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市場統合を推進したネオリベラリズムに反対するだけでなく、<国民>国家による権力の地理的分割を再強化する運動として、トランプ、オルバン、ル・ペン、ウィルダース、などが支持を集めています。ヨーロッパ議会選挙、フランス大統領選挙、ドナルド・トランプの結末が何であろうと、その運動はグローバルな政治運動を革新するでしょう。
強い国家を求めて、恐怖の世界から逃避する。ネオ国家主義の指導者たちは、領土の主権を絶対視し、核兵器による武装を称賛します。
家族・出産を支援する政策。移民・外国人を排斥し、人権や法の支配を外から強制されることに反対する。国境を再強化し、教育に介入し、産業を保護育成し、特に防衛を重視する。国際社会や国際秩序を軽蔑し、国益のために隣国を威嚇し、大国として行動するべきだ。経済活動への介入・規制はそのための手段である。・・・日本の政治的再編もそうなるでしょう。