IPEの想像力 6/29/2026
スポーツでも、音楽でも、料理や文学、美術、娯楽においても、地理や言語の障壁を超えて、人類は融合する力があります。Hélène ReyがFTに載せた論説に私は共感します。Hélène Rey, "Global imbalances need not lead to trade wars," FT June 15, 2026.「2025年、米国の経常収支赤字はGDP比3.6%に達し、中国の経常収支黒字はGDP比3%を上回った。これは、1兆2000億ドルに迫るモノの貿易黒字が牽引役となった。ユーロ圏は依然として黒字を維持しており、米国の対外純債務はGDP比90%という驚異的な水準に達している。」「不均衡の原因は不均衡な成長モデルと関連しており、その多くは国内要因によるものです。具体的には、中国の慢性的な消費低迷、欧州の生産投資の弱さ、そして米国の巨額の財政赤字などが挙げられます。」「必要な調整は、互いに競合するものではなく、むしろ補完し合うものである。中国が消費重視のリバランスを進め、欧州が生産的な投資を増やし、米国が財政を立て直すことは、互いに渋々行う恩恵ではない。これらは、相互に強化し合う単一の政策の一部なのである。」しかし、フランスにおけるG7で国際収支不均衡を話し合うことについて、B. アイケングリーンが無駄だという意見をPSに載せました。Barry Eichengreen, "No Bridge Over Healing Waters for the G7," PS Jun 15, 2026.為替レートをめぐる国際通貨制度の改革について、彼は政策協調に反対し、変動レート制と、それが機能するような金融市場改革を主張しました。政府や通貨当局が為替レートを正しく管理できる、国際政策協調について合意し、維持できる、という考え方を否定していたからです。****チャイナ・ショック2.0 についてのEUが示す懸念を、日本がすでに経験したことではないか、と私は思いました。Valentina Aprigliano et al., "China shock 2.0 and the euro area: Cheaper imports, tougher competition," VoxEU / 23 Jun 2026.「2020年以降、中国の財輸出が急拡大する一方で輸入は概ね停滞し、2025年の財貿易黒字は1兆2000億ドルという過去最高を記録しました。こうした輸出の再急増は、新たな「チャイナ・ショック」への懸念を再燃させています。しかし、「チャイナ・ショック2.0」は、中国のWTO加盟後に生じた2000年代初頭の事態の単なる繰り返しではありません。最初のショックが、労働集約型製品の低コスト生産国として中国が世界市場に統合されたことによって主に引き起こされたのに対し(Autor et al. 2016)、今回のショックは様相が異なります。現在、中国企業は先端製造業、グリーン技術、機械、電子機器、輸送用機器など、欧州の産業基盤の中核を成す分野で競争力を強めているのです。」The Economistは、中国(そして、日本や韓国)の成長モデルを批判しています。For its own sake, China should change its growth model, The Economist June 13th 2026「中国の製造業者は、かつてははるかに豊かな国々の専有物であった高度な産業においても、恐るべきグローバル競争相手となった。彼らはドイツの自動車メーカーを出し抜き、韓国の造船業者を出し抜き、アメリカの半導体設計業者との差を縮めてきた。世界各国の指導者たちが、大切にしている国内産業への脅威を抑え、危険な依存を回避しようと躍起になっている」「貿易の経済成長への貢献は、2021年の不動産バブル崩壊を乗り切る上で役立った。また、多くの国際サプライチェーンにおける中国の支配的な地位は、敵対的な世界において地政学的な影響力をもたらしている。」「産業力ではなく、経済全体の健全性という観点から見ると、中国の成長モデルは失敗していると言えるだろう。この矛盾にはいくつかの理由がある。かつて数百万人の出稼ぎ労働者を沿岸部の工場に引き寄せた輸出ブームとは異なり、中国の近年の成功は多くの雇用を生み出していない。・・・製造業で職を見つける出稼ぎ労働者の割合は、2010年の約37%から昨年は28%にまで減少した。彼らの多くは、代わりに配達員やギグエコノミーの他の分野で働いている。」****アメリカにまで独裁的な政府が誕生し、地政学的な均衡を破る戦争、核の拡散が起きました。地政学から国際政策協力への転換がむつかしいのには理由があるのです。解決策は、国際システムの調整にあるはずです。米中の安全保障をシステムに取り込む。国際連合・安保理、IMF、WTO、G20の改革から始まるでしょう。同時に、移行期の不安によって政府は不安定化し、社会・国家が再編される局面を迎えています。富と権力に憑かれた支配層や覇権国家の盛衰にしたがう混乱や戦争を避けることは可能です。家族や地域の仲間から、世界政治を築くには、さまざまな制度の改革とそれを動かす有能なテクノクラート、優れた言葉を駆使して共感を広げる指導者たちがもっと必要です。