人気の割にはあまり売れなかったP38の現代版、ワルサーP5 | ジャック天野のガンダイジェスト

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スモールアームズ(小火器)に関するエッセイです。同じアメブロで書いていたブログを継続して、不定期で更新して行きます。

ワルサーP5は007シリーズにも登場しますが、じつは1976年の西ドイツ警察の制式拳銃トライアルに提出され、一部の警察で採用された自動拳銃です。P5の名称はP4の後継ということで、P4とはP1として西ドイツ軍に制式採用されたP38のことです。ワルサーP38はドイツ第三帝国の制式拳銃だったわけですが、スライドカバーやハンマーが発射時に外れて射手を傷つけることがありました。それを改良したのがP4だったわけですが、さらに銃身を短くし、全体のデザインも変えたのがP5だったのです。


口径は9mm×19、つまり9mmパラベラムとワルサーP38から変わりなく、ショートリコイル式の作動も同じでした。また、弾倉はシングルコラムであり、8発を装填することができました。トリガーはP38と同じダブルアクションを採用し、さらに、ハンマーをコックすることでシングルアクションで作動させることもできました。


つまり、デザインや安全性はともかく、全体としてはP38からそう大きくは変わっていなかったのです。その割に製造工程が複雑であり、結果として高価になってしまいました。これが西ドイツ警察でも、一部しか採用されなかった理由のようで、軍用としても西ドイツ軍にも採用されませんでした。しかし、P5を小型化したP5C(コンパクト)がイギリス陸軍の一部で採用されましたが、ほかの国では採用されていません。性能的には非常に優秀なP5でしたが、やはり価格の高さと、P38からそれほど代わり映えのしない点がネックだったのかも知れませんね。ワルサー社はこのP5の反省から、路線を転換してワルサーP99を生み出し、成果を収めることになるのです。


ワルサー社の宣伝映画のような007シリーズでも、「007 オクトパシー」で、ロジャー・ムーアの007が使い、また初代007のショーン・コネリーが一作だけ特別編として復活した「ネバーセイ・ネバーアゲイン」でも使われますが、結局、また従来どおりにワルサーPPKに戻ってしまうのです。ただ、その後は、P99が使われるようになったり、またPPKに戻ったりと、007シリーズも揺れているようですね。そのほか、ロバート・らドラム原作の「ボーン・アイデンティティー」ではボーン役のリチャード・チェンバレンが使ったり、そのリメイク版でマット・デーモンが使ったり、と映画では登場が多く、実際とは違って人気が高いようです。



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