マル父 (社台グループ論) | ☆まけうまブログ★

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徒然なるままに日暮らしスマホに向かひて心に浮かぶよしなしごとを競べ馬の有様とともに書きつらねる自己満ブログ。
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競馬道は一にも二にも検証の積み重ね。怠ればハズレ馬券が山と成す。

日本B級グルメ探訪記と間違われそうな、へいぽー♪状態になってたので、たまには真面目に競馬論。


昨日、なにげなく日本ダービー号の競馬ブックを見てたら改めてため息が出た。

確かに5年位前から、状況が一変して来ていた訳だが…
出走馬の父が、ほとんど全部マル父なのだ。
マル父マークがない種牡馬といえば…シンボリクリスエスにクロフネ。
外国で生まれただけで、誰もが知ってるれっきとした日本の競走馬じゃねぇかよ。

そして、コスモオオゾラの父ロージズインメイを除くダービー全登録馬の父が、社台スタリオン繋養馬か社台グループの生産馬なのである。

15~20年前、誰がこんな時代が来ることを予想していただろうか。

内国産種牡馬は、輸入組に較べて劣るという信仰はまだ根強く残っていた。

現に当時の社台の種牡馬といえば、ノーザンテースト、トニービン、リアルシャダイ、サンデーサイレンス、アレミロード、ジャッヂアンジェルーチ、ジェイドロバリー、ヘクタープロテクター、ホワイトマズル、ペンタイア、グルームダンサー、リファーズウイッシュ、ワージヴ、ゴールデンフェザント…
どれもこれも輸入組ばかりが主力で、荻伏に繋養されていた格安組を除く純国産といえばサッカーボーイくらいのものだったと思う。(後に社台産サクラバクシンオーや、外様のメジロマックイーン、トウカイテイオーらが社台スタリオン入りすることになる。)
ダービー馬ダイナガリバーでさえ、社台では種牡馬になっていない。

故吉田善哉氏は、輸入種牡馬でなければ成功しないとの信念を決して曲げなかったと言われる。
サッカーボーイは、次男の吉田勝己氏の強硬な主張によって善哉氏を説得し、例外的に社台で種牡馬になったようだ。
見立て通り、サッカーボーイは成功したが、自身同様のマイラー型ではなくスタミナ型の競走馬を輩出する種牡馬として大成した。
ここらにも血統の奥深さがある。

何と言っても社台の成功はひとえにノーザンテーストの成功に基礎があると言っていいだろう。
成田空港開港によって京成線の線路予定地に掛かって買収された土地の代金を全部馬に注ぎ込んだ善哉氏であったが、輸入種牡馬が次々失敗し、ガーサントやバウンティアス産駒が障害で稼ぐ賞金で食い繋いでいたようだ。
そんな時代の社台など、今から見ると想像もつかないが…
ノーザンテーストに至るまでの歴史は果敢な挑戦者そのものだった。

門外不出の種といわれたノーザンテーストの導入によって資金を得た社台は、種牡馬候補として競走馬になる前のリアルシャダイを手に入れ、トニービンを導入できた。
この2頭の成功は、その後購入し、日本の競馬に革命を起こすことになるアメリカ二冠馬に較べると、今となっては少し地味に語られがちだが、ノーザンテースト以降の社台を盤石の存在にした点で、果たした功績はとてつもなく大きい。

ノーザンテーストによって牝系はブリードアップされ、獲得した賞金で海外の優秀な繁殖牝馬が買い揃えられる。

その2頭から間を置くことなく、ついに真打ちサンデーサイレンスが導入される。

サンデー産駒の活躍についてはもはや書く必要がないだろう。
社台産ではないスペシャルウイークを含めて、サンデー自身が次々と優秀な次世代の種牡馬を送り込むことになるのだ。

無論、その頃はまだサンデー一色ではない。
サンデーと双璧を成して大物を輩出したブライアンズタイムがいた。
ダービー馬ウイニングチケットを出したトニービンからも、社台産ダービー馬のジャングルポケットが生まれる。
そして、バブル期の名残で数多く輸入された外国産馬…エルコンドルパサー、グラスワンダー、クロフネ、シンボリクリスエスなどの超一流は、タイキシャトルを除いてほぼすべて社台スタリオンで繋養される。
ブライアンズタイムからは、ダービー馬タニノギムレットが社台に来た。
個人馬主所有の有力馬は、種牡馬としての導入を見越して、現役のうちから権利の何割かを予め入手しておく手法を取るわけだ。

それらの種牡馬が、急逝したサンデーサイレンスの穴を埋めて余りあるほどの活躍をする。

もはや社台グループは、種牡馬を輸入する必要がなくなってしまった。
それどころか、サンデー系をはじめとする国産種牡馬を、シャトルとして南半球や欧州に貸し出す、あるいは売却することで、さらなる利益を得るようになる。

これがマル父だらけになった下地であり、90年代以上の圧倒的一人勝ち状態を社台グループが突き進むようになった最大の要因になったのだ。

種牡馬を購入するための莫大な資金は⇒
①さらなる優秀な海外繁殖牝馬の導入を加速させる。
②育成調教部門における、施設と技術の拡充。
主にこの2点に集中的に用いられるようになる。

元々社台グループには、北海道以外にも、外厩として山元トレセンとグリーンウッドがあった。
しかし、勝己氏のノーザンファームは、本家社台ファームとは違う独自のやり方を突き進む。
気候の涼しい栗東近くの信楽に、素晴らしい坂路や調教施設を備えたノーザンファームしがらきを開設、さらに早田牧場⇒シルクの調教拠点であった天栄ホースパークを買い取り、ノーザンファーム天栄として美浦にも対応した外厩を設置した。

社台ファーム系とノーザンファーム系が完全に分離した外厩で育成調教が進められることになった。

白老ファームや追分ファームは、クラブに馬を送ることがメインなので、社台RH系に入るか、サンデーR系に入るかで、調教も変わってくることになる。

しがらきと天栄の開設によって、ノーザンは独自の育成調教が可能になり、同時にグリーンウッドや山元トレセンにも余裕が生まれ、よりキメの細かい調教が可能になったはずだ。

大山ヒルズを擁し、ある意味孤高の道を突き進むマエコウさんのノースヒルズマネージメントのような存在もあるが…
これでは誰も社台グループに太刀打ちできようはずがないのがわかる。

唯一ダーレージャパンを除いては…


かつては父が内国産で市場取引された牝馬だったら、3つの限定戦に使うことが出来たのだ。
マル混マークのないレースも含めたら4つ。
今では、そんな優遇をする必要性自体が消失した。
特殊な日本の芝やダートに特化したマル父の方が走る上に、セレクトセール上場馬の方が庭先で買うより走る。
おまけにブエナやウォッカやダスカのような、下手な牡より遥かに強いのがゴロゴロ出て来る始末。


もちろん一人勝ちでも、社台グループは気を抜いてはいない。

この景気では、以前のような価格や頭数では馬が売れない⇒クラブ提供に運営の中心が移行してきている。
しかもマル父、マル市の限定戦は一掃され、賞金は減額の一途。クラブ馬の未勝利保証も禁止されるに至っては、個人馬主同様に、馬主資格を持たない一般の出資者の財布も渋りがち。
だからこそ、1/100口のキャロットFやグリーンFにも、同等のレベルの魅力ある競走馬を送り込み、一般出資者の傘下クラブからの流出を食い止める作戦に出ているのだろう。

明らかに社台グループといえども、安泰にあぐらをかいてはいられない状況になっているのだ。

それは外国人騎手の起用や入厩先の厩舎も含めて、細部に至るまで徹底してシビアなグループ経営に本腰を入れていることにも見て取れる。
[馬主の旦那]的なポジションに、もはや今の社台グループはいない。
旦那方は、社台の商売相手であって、社台グループにそういう旧弊を要求する調教師は切って、新しい時代感覚に対応する厩舎にのみ良質な馬を回す。

そんな鋭敏な経営感覚を持った社台グループが、サンデー系の蔓延によって、将来訪れる血の袋小路を危惧していないことはありえない。
その証拠に、早世はしたがチチカステナンゴを導入したり、新しい血を入れる試みも再開している。

世界基準とかけ離れた日本の芝の異様な高速馬場を考えると、ここしばらくはこのマル父時代は続きそうだが…
結局ディープインパクトに頼っていては、最後はどこかでツケが回る。
新しい血が必要になってくる。
差し当たり、エイシンアポロン、スーニ、トランセンドあたりは期待したい必要な血に思えるが、1パンチ足りない部分もありそうに思える。

そう考えると、クラシック血統至上主義の日本において、今最も必要な種牡馬として期待したいのは、前にも書いたが、やはりエイシンフラッシュだろう。

タニノギムレットは、NHKマイルで超絶の不利を受けて武豊騎手が流して走らせながら3着に来た。そしてシンボリクリスエス以下を問題にせず圧勝したダービーの勝ちっぷり。
この桁違いのポテンシャルに、自分は種牡馬としての成功を感じた。
案の定、初年度からダービーに重賞勝ち馬3頭を送り出し、ウォッカが優勝を果たしている。

そこまでのポテンシャルをエイシンフラッシュに感じるか?と言われると何とも言えないが…
しかし1ハロンだけビュッと切れるあの脚は、サンデー系との明らかな資質の違いを感じさせる。

キングカメハメハの役割をこの馬が分担できるようになれば…
サンデー系以外の層を厚くできる上に、サンデー系牝馬にも交配しやすくなるだろう。

種牡馬として、この馬をどう遇するかが、意外に社台グループにとっても鍵となるんじゃないかと思う。