白昼堂々起きたSWORDへの襲撃、それにも関わらず本部への被害は少なかった。隊員達の迅速な対応とスライム達が1体も爆発しなかったことが幸いし、復旧作業もかなり捗っていた。
剛「よし、どこにもスライムは残ってないぞー」
燈冶「こっちも大丈夫!建物の破損状態もカメラで確認した通りだった。」
隊員達は怪我人の搬送をしつつ、スライム達が残っていないか巡回していた。そんな中、黎花は叶人川に相談を持ちかけていた。
真澄「とすると、戒亡の行動範囲はここまでだね?」
黎花「えぇ。前回の襲撃と今回の襲撃でのヤツの行動範囲はこの一画です。」
真澄「OK.じゃあすぐにこの一帯に冷却トラップを仕掛けておくよ。またいつ仕掛けてくるか分からないし。」
戒亡の能力の1つ、〔紫陽災〕には一度訪れた場所へワープすることができる。再びの奇襲を想定し、黎花達は冷却トラップを設置することにした。
真澄「この範囲には隊員達が近寄らないようにしておくよ。情報提供ありがと。」
黎花「こちらこそ、ご協力ありがとうございます。」
真澄「……こんなこと言うのはアレかもだけど、君も大変だね。話はある程度把握してるよ。」
黎花「大変……ですか。」
黎花がここまで執拗に戒亡を警戒するのは、やはり自分達の血縁から来る因縁が原因だった。戒亡の正体を知った叶人川から労いの言葉をもらうも、黎花は皮肉げに笑って返す。
黎花「その言葉で片付けられたら……どれほど楽だったでしょうね。」
真澄「Sorry. 仕事に戻るよ。」
一方、西蛇隊本部の前では報告を待つ西蛇と岳の元へ、巡回を終えた一条達が戻ってきた。すると西蛇達の他にも、2人の人影が見えた。
アンナ「巡回完了しました! って、あれ?あなたは……」
華希「おや、あなた方は……以前我々の事務所を訪れた一条さん達ですね。お久しぶりです。」
結々子「えぇ。お久しぶりですわ。 ……それと、そちらの方は?」
真司「そういえば今年入ったフレッシュマン達とは初めてだったな。 俺は地獄谷隊副隊長の別府 真司だ。よろしくな。」
そこには別府と鶴姫の姿もあった。
楪「別府 真司……どうしてあなたまで本部に?」
真司「おぉ!上ノ原さん!話には聞いていたが、どの隊にも属さなかったあなたが、西蛇隊に入ったってのはホントだったんですね!」
楪「えぇ……そうね。」
蒼一郎「で、2人は何でわざわざウチまで来たんだ?」
双牙「すみません。鶴姫さんは私が呼びました。どうしても話しておきたいことがありまして。」
真司「あ、俺は勝手に華希についてきただけです。」
華希「お伝えしたいこととは、何でしょうか?」
双牙「信じられない話かもしれませんが……今日の襲撃で、我々は〔剣崎 王夜〕と接触しました。」
華希「!?」
岳の口から出た剣崎の名前に、鶴姫は目を見開く。まるで信じられないといった様子だ。
華希「……念の為に確認しますが、彼で間違いありませんでしたか?」
双牙「はい。紛れもなく剣崎 王夜でした。 彼はデモンズとして、我々と対峙しました。」
アンナ「その人なら先日、 私と楪さんも会いました。」
華希「……そう、ですか。」
真司「……名前なら聞いたことはありますよ。俺は皇城隊じゃないんで顔とかは知りませんが。」
結々子「あの、その人がどうかしたのですの? 皆さん彼のことを知っているようですが。」
本渡からの質問に、岳は息を吐き、答える。
双牙「彼はかつて、〔皇城隊の副隊長〕だった人ですよ。」
一同「「!?」」
剣崎の正体を聞いた一同は驚愕する。それでも岳は話を続ける。
双牙「彼は皇城隊長のお兄さんが隊長をしていた際の副隊長でした。大変優秀だったのを今でも覚えていますよ。 ただ……サバトの日以降行方をくらましていたので、サバトの日に巻き込まれたのかと……」
華希「僕は副隊長に就任した日に彼のことを聞かされました。皇城隊長のお兄様の右腕ともいえる人物だったと伺っています。」
蒼一郎「そんな人が、どうして今はデモンズに……」
双牙「それともう1つ、彼には〔大きな変化〕が見られました。 それは……」
岳が話を続けようとした、その時だった。本部全体にアナウンスの開始を告げる音が鳴った。そこから西園寺の声が聞こえてくる。
幸浩『皆、夜中まで復旧作業ご苦労だ。 だが、 一度手を止めて話を聞いてほしい。』
アンナ「何でしょうか……?」
幸浩『今回の襲撃の首謀者、そして、我々が長年闘ってきたデモンズの正体とその創始者、それを今から……皆に話す。』