S8  84-1  恐怖を払え | レクイエムのブログ

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雲雀隊事務所強襲から始まったSWORDとデモンズ吾妻派との戦争は遂に、吾妻を残すのみとなった。そして吾妻を迎え撃つのはSWORD最高戦力、皇城隊隊長、皇城 蘭世だ。2人は今、互いに睨み合っていた。


蘭世「……。」


千狛瑠「いい覇気ね、皇城 蘭世。死ぬ前最後の闘いなのだから、せいぜい後悔のないようにしなさい。」


蘭世「世迷い言を…… 打ち倒されるのはお前だ。お前を倒して、デモンズを完全に瓦解する。」


千狛瑠「いい威勢ね。けど、気を詰めすぎじゃないかしら?」


話しながら吾妻が手を動かす。その動作に反応した皇城が取った行動はバックステップだった。その瞬間、吾妻が指を鳴らすと同時にテラースモッグが周囲を包む。


千狛瑠「深呼吸でもしたらどうかしら?」


蘭世(このガスは吸えないな。こちらが風上だ。一定距離を空けて様子を見る。)


ガスが広がる範囲を読み切り、皇城は足を止める。広がるテラースモッグは目眩ましとしての役割も持ち、テラースモッグの中に潜む吾妻の動きに集中力を上げる。そして次の瞬間、巨大な拳がテラースモッグを突き破って現れる。


千狛瑠「一瞬で終わってくれないわよね?」


蘭世「!」


迫ってきたのはフィアーテラーズの拳だった。振り下ろされる拳を前に、皇城を守るように半透明の盾が現れる。盾を震わすほどの衝撃が襲うも、皇城は無傷だ。


蘭世「……噂通りの冷酷さだな。 敵陣にいた仲間を簡単に斬り捨てるか。」


テラースモッグから皇城は逃れられていたものの、地面に伏していた裏切り者の隊員達は呑まれてしまった。テラースモッグを大量に吸いこんでしまった隊員達は恐怖に支配され、その恐怖心がフィアーテラーズの力と化していた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!怖いよぉぉぉぉ!!」

「ヒィィィ!!助けてェ!!」


千狛瑠「お前との戦闘じゃ邪魔になるだけ。 それよりも、私とだけやり合いましょうよ。」


再びフィアーテラーズが拳を振り上げる。その拳も盾で防ごうとすると、フィアーテラーズの攻撃に合わせるように吾妻が迫ってくる。その手にはナイフが握られている。


蘭世「近付けると思うか?」


迫ってくる吾妻めがけ、皇城は小さな盾をいくつも飛ばす。しかしそんな盾の猛攻をすり抜け、皇城まで迫る。


千狛瑠「フィアーテラーズを押さえながらこんな精密な動きができるなんて素晴らしいわね!」


蘭世「このくらい基本事項だ。」


迫ってきた吾妻へ、皇城は細身の剣、レイピアを抜く。ナイフとレイピアがぶつかり合い、火花を散らしながら壮絶な斬り合いが繰り広げられる。


千狛瑠「いいわね皇城蘭世!他のヤツらとは段違いに楽しめるわ!」


蘭世「何を笑っている異常者め。大人しく斬られろ。」


吾妻の異常性を皇城はすぐに直感する。隊服の防刃性能もあり、皇城が斬られたとしても浅く、その下の体に刃が届くことはない。対する吾妻は隊服を身に着けていない。そのためすり抜けた皇城の刃が吾妻の体を切り刻む。しかし吾妻はその度に前のめりになり、皇城に斬りかかってくる。


千狛瑠「どんどん削られていくわねぇ!!先に肉になるのはどっちかしら!?」


蘭世「ベラベラと……喋るな!」


斬り合いを途切れさせるために皇城が大きくレイピアを振る。2人の距離が開くと同時、吾妻が変わった形状のナイフを取り出してくる。


千狛瑠「お前、音本とやり合ったことはあるかしら?」


蘭世「そのナイフ、スペツナズナイフだろう? 部下の得物に頼るとは情けなくないのか?」


その切っ先を吾妻は皇城へ向ける。無論皇城も撃ち落とす気でその切っ先を注視する。しかしその時、真横からガラスが砕けるような音が聞こえてきた。


蘭世「!」


皇城に迫ってきたのはフィアーテラーズだった。押さえていた盾が遂に破壊され、皇城に迫ってきたのだ。


千狛瑠「SWORD最強の盾も流石に保たなかったようねぇ!!」


皇城を射程圏内に捉えたフィアーテラーズが右フックを放ってくる。間違いなくそれは人間なら一撃で命脈が断たれるものだ。右フックを躱すために皇城が体勢を低くする。しかし伏せたところを吾妻は見逃さない。


千狛瑠「もらったわ。」


発射されるスペツナズナイフは音本が使用しているものと同様に改造が施されていて、通常のものよりも速く、皇城に迫ってくる。危機的な状況であるにも関わらず、皇城は顔色1つ変えない。


蘭世「私を……なめるなよ。」


皇城が自身の足元に触れる。盾の姿が皇城の下に浮かび上がった瞬間、盾に押し上げられた皇城が急上昇し、空中に飛び上がった。咄嗟に吾妻も空中に浮かぶ皇城を迎撃しようと銃を構えるも、皇城は既に手を撃っていた。


蘭世「この皇城蘭世、弾丸1発、ナイフ1本で落とせるほど甘くないぞ。」


空中でも盾を出していた皇城がそれに足場のように着地すると、盾が射出される勢いのまま吾妻へ急降下を仕掛ける。


千狛瑠「速いッ!」


蘭世「痛みを恐れぬのなら、一撃で仕留めるだけだ!」


盾の押し出しにより加速した皇城が放ったのは、神速ともいえるレイピアの突きだ。皇城と吾妻が交差すると同時、吾妻から血飛沫が舞った。


千狛瑠「……ッ!」