トドメを刺すべく、五十嵐は金棒を振り上げ襲いかかる。再び回避するかと思われた西蛇だったが、なんと五十嵐が振り下ろす金棒を腕で受けてみせたのだ。
雷汰「そうきたか……!」
蒼一郎(もう一度距離を空ければコイツはさっきの技を使ってくる!もうここからは離さねぇ!)
雷汰「だが……!俺の金棒はそう易々と受け止められねぇぞ!!」
再び五十嵐は嵐のような金棒の連打を西蛇に浴びせる。振り下ろされる怒濤の猛攻を前に、西蛇は腕を交差し、耐えていく。
雷汰「オラオラどうした!?ガードしてるだけかぁ!?」
蒼一郎「そんな金棒をいくら簡単に振り回せるって言ってもなぁ……!それだけ振り回せば、〔クセ〕の1つくらい見えるだろ!!」
金棒が腕に当たり、再び振り上げられようとする。その隙を、何度も腕で受けてリズムを掴んでいた西蛇は見逃さなかった。西蛇は咄嗟に足を上げ、五十嵐の金的めがけ強烈な蹴りを放った。
雷汰「ぐぅぅぅぅぅぅ!!」
蒼一郎「ボールキャップにその甲冑、潰すまではいかなかったな。 だが……ようやく体勢が崩れた。」
急所を蹴り抜かれた五十嵐が思わず体勢を崩す。その隙に飛び込む西蛇の背筋が隆起する。そして放ったのは、両腕で放つ拳の連打だった。
蒼一郎「〔多頭ノ大蛇ヤマタノオロチ〕!!」
雷汰「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
キリングシェイドによって強化された背筋により、拳の回転率は跳ね上がる。そして鍛え上げられた西蛇の腕から放たれる拳の乱打はまさに機関銃のようだった。五十嵐の意識を完全に断つまで振るおうとした拳だったが、胴に軽く触れたその時、西蛇の腕が止まった。
蒼一郎「……ッ!」
雷汰「俺の金棒を受けすぎたな。体の方が先に限界が来たな……!」
強烈な金棒の連打を浴びた西蛇の腕は限界に達していた。動きを止めた西蛇めがけ、五十嵐は風雷鎧武から電流を放つ。電流をまともにくらった西蛇の全身が激しく痙攣する。
蒼一郎「ぐあぁぁぁぁぁぁ!!」
雷汰「テメェはもう動けねぇ!!テメェが乱打で俺を仕留めようとしたのなら……!俺はテメェを!一撃で沈めてやる!!」
叫びながら五十嵐が金棒を振り上げる。それと同時、金棒から風が巻き起こり、黒く荒々しく空気を揺らす竜巻が起こる。巨大な竜巻と化した金棒を五十嵐は西蛇へ振り下ろそうとする。
雷汰「俺は……!吾妻さんを裏社会の王にするんじゃぁぁぁぁ!! そのために……!テメェを礎にさせてもらうぞぉぉぉ!!!」
金棒が今まさに振り下ろされようとしたその時、五十嵐の頭部が青白く光る。風雷鎧武の最後の装備、〔兜〕を纏おうとしているのだ。装備の全てが完成した風雷鎧武はエネルギーが最大となり、全てを揃えた五十嵐を倒すことは不可能に近い。五十嵐は全ての装備が揃う瞬間を狙っていたのだ。
雷汰「西蛇 蒼一郎!!これで終わりだぁぁぁ!!」
雷を伴う漆黒の竜巻が振り下ろされる。その竜巻が西蛇を押し潰そうとする。しかしそれを迎え撃つ西蛇の目はまだ、死んではいなかった。
蒼一郎「やっぱりもう1段階、まだ奥の手を隠してたんだな。 こっちは……真正面からそれを撃ち返す!!」
腰を深く落とし、西蛇は右腕に力を集中させる。キリングシェイドを巻きつけた右腕の筋肉が隆起する。そして、正真正銘、自身の全てを乗せた拳を放つ。
蒼一郎「〔蛇突ビッグヴァイパー〕!!」
雷汰「何ッ!?」
五十嵐がその威力に驚いた、その瞬間だった。西蛇めがけ振り下ろされたはずの金棒が自身の方へ帰ってきたのだ。そのまま振り切られた拳は、なんと金棒ごと五十嵐の体を弾き飛ばしたのだ。
蒼一郎「吹き飛べぇぇぇぇぇ!!!」
雷汰「ごはぁぁ!?」
自身の金棒に押し潰されるようなかたちで五十嵐が倒れる。その体に纏われていた風雷鎧武は微かな光と共に消える。西蛇の拳は、完全に五十嵐を沈めたのだ。その威力は、五十嵐の金棒についた拳の跡が物語っている。全身全霊の拳を放った西蛇は、その場に膝から崩れ落ちる。それでも五十嵐を睨みつけ、言い放つ。
蒼一郎「SWORDを……なめるなよ……!」
S8 83 虎擲竜挐 完
次回予告
SWORDとデモンズ吾妻派との最終決戦も遂にクライマックスへと向かう。
互いの最強戦力同士がぶつかり合う闘いに、一条が駆けつける。
84 恐怖を払え