S8  78-4  総力戦始動 | レクイエムのブログ

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SWORDとデモンズ吾妻派、 各陣営が決戦に向けて準備を進めるなか、この男は密かに闘いの行く末に想いを馳せていた。


「それでは盟神大臣、また後日。」


公由「あぁ。明日も有意義な時間を過ごそう。」


防衛大臣として会議を終了した盟神が駐車場へ向かう。普段通りの振る舞いを見せるも、その頭の中は間もなく始まる闘いのことでいっぱいだった。


公由(いよいよ吾妻君も仕掛けるか……私が手塩にかけて育てた組織2つが真正面からぶつかり合う…… 桐生君の時では味わえなかった興奮を実感しているよ……!)


1人で駐車場に出た盟神だったが、直後物陰からスーツ姿の男達がぞろぞろと盟神の前に現れる。見るからに防衛省の人間ではない。


公由「おや、君達は…… 何の用かな?」


「盟神 公由防衛大臣でお間違いないですね?」


先頭の1人が手帳を取り出す。その手帳を見た盟神はすぐに集団の正体に気付く。


公由「〔公安警察〕が私に何の用ですかな?」


「あなたにはデモンズに関与している疑惑がある。我々についてきてもらいますよ。」


公由「何をそんな……酷い濡れ衣だ。 何処にそんな証拠があると?」


「それは……これから取り調べで聞くことだ!」


公安警察が盟神を捕らえようと飛びかかる。しかし次の瞬間、盟神が目の前から消えた。


「な……!消えた……!?」

「何処に……!?」


公由「人にそんなあらぬ疑いをかけた上に幻覚まで見るとは……よほど疲れているのでしょう?」


「「!?」」


声のした方を見ると、なんと盟神はいつの間にか公安警察の背後に立っていたのだ。動揺する公安警察を前に、盟神は平然とした様子で公安警察の身を案じるような発言をする。


公由「そんなに疲れていてはいつ体調を崩してしまってもおかしく無い。 どうか、今日はお引き取りを。」


「何を……ウッ!?」


盟神を再び捕らえようとした公安警察だったが、突如全員が倒れてしまったのだ。顔色が悪くなったり、酷く汗をかいたり、嘔吐する者までいる。


「何だ……!?体が……物凄く怠い……!?」

「ゲホッ!ゲホッ!」

「うげぇぇぇぇ……!腹が……!」


公由「それでは、私はここで。 救急車なら呼んであげましょう。」


盟神は一礼をし、その場を後にする。公安警察から離れると、物陰から1つの影が盟神に近づいてくる。それはかなりの長身の女性だった。長く垂れた髪の下から覗く顔色は酷く悪い。


公由「〔病垂君〕、助かるよ。」


???「盟神先生をお守りするのが……私達〔親衛隊〕の職務ですから……ゲホッ、ゲホッ……」


デモンズにはロイド派と吾妻派、そして無所属派がある。そのいずれにも属さない幹部、それは盟神の護衛にあたる親衛隊だ。ごく少数しかいない幹部の内の1人が、この病垂だ。


─デモンズ 盟神親衛隊 病垂 禍帆子(やまいだれ かほこ)─


公由「それにしても、君の〔病気〕のストックには驚かされるよ。」


禍帆子「インフルエンザ、風邪、胃腸炎、肺炎……ほとんど〔移せた〕ので今は気分が少しいいです……ゴホッ」


公由「〔剣崎君〕には別件にあたってもらっているが、君1人でもかなり心強いよ。」


禍帆子「お褒めいただき光栄です……ゲホッ、ゲホッ……」


公由「ところで……今吾妻君がSWORDと全面戦争を起こそうとしてるのは君も知っているかな?」


禍帆子「はい……デモンズ内ではすっかりこの話題で……ゴホッ、持ちきりですから……」


公由「吾妻君とその幹部達はいずれも一騎当千の実力を誇っていることは私もよく理解している。 だが……いささか心配ではあるんだよ。SWORDもまた層が厚い。隊長もまた一騎当千とも言える。」


禍帆子「……吾妻のこと、信用されていないのですか?」


公由「まさか。 だが、幹部を3人も失った穴は大きい。少しばかり手助けをしようと思ってね。 〔三途君〕と〔湧別君〕を派遣する。」


禍帆子「あのお2人を……ゴホッ 過剰戦力ではありませんか?」


公由「それならそれでもいいが……私は見てみたいんだよ。 手塩にかけて育てた私の〔組織子ども達〕が、真正面からぶつかり、しのぎを削る闘いをね。」


そう語る盟神の目には、鈍色の光がぎらついていた。