─SWORD 叶人川ラボ─
普段なら忙しない声が聞こえてくる叶人川のラボも静かな空気に包まれていた。叶人川がキーボードを打つ音だけが聞こえるなか、西園寺が入ってくる。
幸浩「本多隊員の葬儀が今終わったところだ。」
真澄「そうみたいだね。」
幸浩「サバトの日から覚悟していたが、やはり来るものがあるな。」
真澄「タートルボーイは今年入ったばかりだったからね。余計にそう感じても仕方ないさ。」
そんな会話をしながらも、叶人川はパソコンを動かす。
幸浩「ところで、お前は何をしているんだ?」
真澄「あの日、星降隊には最新の発信機を配布していたんだ。もしかすると、タートルボーイもそれを使ったと思ってね。 ほら。」
叶人川がパソコンの画面を西園寺に見せる。そこには簡略化された地図の上を動く赤い点が映っていた。
幸浩「まさかこれが……」
真澄「そ。これがタートルボーイの置き土産だよ。 スパロウボーイの話から考えるに、恐らくこの発信機は吾妻が使用している車につけられている。ここから連中のヤサも、吾妻の居場所も分かるかもしれない。」
幸浩「すぐに星降隊に連絡を…… いや、待てよ。」
本多が取り付けた発信機により、吾妻の居場所が分かるかもしれないと星降隊に告げようとした西園寺だったが、マップを見て足を止める。
幸浩「星降隊は今葬儀を終えて傷心状態のはずだ。そんな中で仇である吾妻の居場所を伝えたとしても、ほぼ全員が怒りで冷静さを失うかもしれない。 このエリアを管轄している隊は……」
それからしばらくして、司令室に星降の他にある人物が呼び出されていた。西園寺は2人にことの顛末を説明する。
幸浩「……というワケだ。無論、罠という可能性もあるが、一気に吾妻に接近するチャンスだ。」
ミチル「そう……ですか。」
???「なるほど。確かにそこならウチの管轄だ。」
星降と共に呼び出されたのは、猿子だった。本多の取り付けた発信機が反応したのは猿子隊が管轄している地域だったのだ。
幸浩「猿子、発信機の追跡を行ってもらえるか?作戦の方はお前に任せる。」
烈火「えぇ、罠だとしても関係ねぇ。向こうもそれ相応の準備をしているはずだ。カウンター取ってやりますよ。」
幸浩「星降も……それでいいな?」
ミチル「……はい。大丈夫です。」
幸浩「分かった。 猿子、くれぐれも頼んだぞ。」
西園寺の指示を受け、2人は司令室を後にする。すると星降が言葉を漏らす。
ミチル「私、隊長失格だなって思っちゃったな。」
烈火「へぇ、何でだ?」
ミチル「みんなの前では泣かないようにしないと、隊長らしくしないとって思ってたのに、貢君見ちゃうと泣いちゃって……それ見てみんなも泣いちゃって…… それよりも、自分の隊員死なせちゃって……私、蘭世ちゃんみたいに上手くできないや……」
話しているうちに星降の目に涙が浮かんでくる。自分の不甲斐なさがどうしようもないのだろう。そんな星降の方を向くわけでもなく、猿子はただまっすぐ前を見て返事をする。
烈火「隊員死んで泣かねぇのが隊長の仕事じゃねぇだろ。」
ミチル「え……」
烈火「死んだヤツは忘れねぇ、2度と誰も死なさねぇ、それが俺達隊長の仕事だよ。 あとな、皇城はアイツなりのやり方を貫いてるだけだ。自分が情けねぇと思うなら、お前なりのやり方を貫き通せ。」
ミチル「私なりの、やり方……」
烈火「自分の隊員達と同じ気持ちになって寄り添う、 それがお前のやり方じゃねぇの?」
ミチル「うん……」
猿子からの返答に星降は立ち止まり、泣きそうになる。猿子はそんな星降に合わせて立ち止まることもなく、前を向きながら話し続ける。
烈火「俺もこっから、隊長としても、〔同期〕としても仕事をする。 自分のやり方を貫き通すのが隊長の仕事なら、同期の仕事は〔同期のヤツの想いを託される〕ことだ。」
冷静に話す猿子だったが、その怒りは星降達と同じだった。居場所が分かるなら確実に仕留める、それが猿子の想いだった。
烈火「誰にケンカ売ったんだか、SWORD随一の武闘派の猿子隊が教えてやるよ。」