本多が吾妻によって殺害されたことは直ちにSWORD全体に広まった。たとえ新入隊員であろうと容赦なく殺す吾妻の恐ろしさ、そして若い命が奪われたことにSWORD全体に怒りと悲しみが広がるなか、本多を知る者達は未だに信じられないといった様子だった。
アンナ「え……貢さんが?」
結々子「はい、先日別の任務中に……吾妻に遭ってしまったそうです。」
剛「今日葬儀だけど、告別式は星降隊だけでやるってよ。 落ち着いた頃に線香上げに行こうぜ。」
アンナ「……はい。」
顔の知った同期の突然の死を受け、普段は明るい一条の気分も沈む。空を見上げても、そこにあるのは分厚い雲だけだった。
アンナ「……もっと、貢さんとお話したかったです。」
一方、星降隊では本多の葬儀が開かれていた。特注の大きめの棺に入れられた本多の顔は青白く、生気のない様子は本当に死んでしまったということが痛感させられる。参列した隊員達からすすり泣く声も聞こえてくる。
射手華「みんな、出棺の前に本多隊員に一言ずつかけてやってくれ。 少しでも、彼を労ってやらないとな。」
左慈の言葉で星降隊の隊員達はみなそれぞれ、物言わぬ本多に声をかけていく。中でも、本多と苦楽を共にした雅楽代達は大粒の涙を零した。
朝陽「貢……ごめん……ごめん……!俺が一緒にいてやれば、こんな、ことには……!」
真鈴「なんで……私達がいないときに死んだのよ…… いつだって、私達一緒だったじゃない……」
椒「貢、ずっと一緒だって言っただろ…… 起きてくれよ、なぁ……」
ただひたすら、返事をしない本多の亡骸に向けて泣きつく雅楽代達へ、星降が近寄る。
ミチル「貢君はみんなといるとき、とっても幸せそうで、楽しそうだったよ。だから、最期の最期までみんなのために動いたんだよ。 あんまり泣いちゃうと、貢君も心配しちゃうよ?」
雅楽代達が棺から離れると、今度は左慈が話しかける。
射手華「本多 貢隊員、私は……君のような隊員と同じ隊になれたことを生涯忘れない。 まったく……なんでこんなに早くに死ぬんだ……お前ならきっと、素晴らしい隊員になってたはずなのに……!」
強面で厳格な左慈ですら涙を浮かべるのに対し、最後に本多の元を訪れた星降は涙を見せてなかった。棺の中を覗き込むように星降は話しかける。
ミチル「貢君、私よりもおっきな体なのにずっと私のこと隊長として見てくれてたよね。会う度に私の占いのやり方聞いてくれて、自分でも、占い見始めてみたって言ってくれてよね。 今日、君のおうし座1位なんだよ。」
その時、涙を見せてこなかった星降の目から、涙が溢れ出した。
ミチル「ねぇ……1位なんだよ。私よりも順位上なんだよ。なんでずっと寝てるの?朝陽君達、寂しがってるよ? 私も、他のみんなも……ずっと寂しいよ。」
隊長という立場から泣くのを堪えてきたんだろう、それでも溢れた星降の涙を見た隊員達はみな、再び泣き出した。
真鈴「貢……うぅ……!」
椒「チクショウ……!吾妻のヤツ、絶対許さねぇ……!」
朝陽「貢、お前との約束は絶対に守るよ…… 俺達は絶対、宵を連れ戻すから……見守っててくれ……!」
この日、本多を送り出した後も、星降隊から悲しみが癒えることはなかった。
─首都高速道路─
悲しみを表すかのような空は繋がっている。空の天気などお構いなしに暴走族が高速道路を走り回っていた。
暴走族「俺達〔亜布雨須〕は止まらねぇ!!ガンガン進めぇ!!」
「この辺一帯はもうシメちまったなぁ!もうサツですら手出しできねぇよ!!」
車線を無視したバイクの集団は周囲の迷惑などお構いなしに暴走を続ける。そんな彼らの前に、立ち塞がるものがあった。荷台ごと横に駐められた巨大トラックだ。
暴走族「あぁ?何だコレ?」
「邪魔だよゴラァ!!ブチ殺すぞ!!」
暴走族が抗議を立てるようにエンジン音をひたすら鳴らす。すると荷台の上から1人の人影が降りてくる。
暴走族「テメェが運転手か!? 俺ら誰だと思って……」
リーダーの男が降りてきた人影に詰め寄ろうとした、その時だった。返ってきたのは銃声だった。
暴走族「え……」
???「どーせお前らみたいな身の程知らずに交渉持ちかけたって時間を無駄にするだけ。だったらこうした方が早いんデスよ。」
リーダーの男は眉間を撃ち抜かれ、即死だった。 リーダーが倒れ、隠れていた人影が現れる。その正体は、御堂だった。
暴走族「ヒッ、ヒィ!!」
「 アイツヤベェ!!逃げるぞ!!」
茶糖子「はいはい逃げない騒がない大人しくする!!」
御堂が威嚇用に放った銃声を聞き、暴走族はみな大人しくなる。そんな暴走族達へ御堂は醜悪な笑みを浮かべながら言う。
茶糖子「お前ら、今すぐ集められるだけ人を集めてお前らの集会場に来い。 1時間で戻らなければ…… その分殺す。」