その1ヶ月が明けて、  
ようやくまた会えるようにはなったけれど、  
私の中にはずっと“消えない感覚”が残っていた。




──怒らせてしまった  
──私は悪いことをしてしまった  
──また同じことが起きないようにしなきゃ




そう思ってしまってからの私は、  
明らかに変わってしまっていた。




彼との関係が戻ったように見えても、  
私の中では「元通り」ではなかった。


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それからの私は、毎月のように  
“彼にだけ届くブログ”を書くようになった。




公開ではなく、私と彼しか見られない設定。  
誰にも見られない、小さな世界。




私はその中で、  
「この1ヶ月、私はちゃんとできていたでしょうか」  
「あなたの負担になっていませんでしたか」  
そんなふうに、自分に問いかけるような言葉を添えて  
心のうちを丁寧に綴った。




それは、まるで懺悔のようだった。  



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ブログを書いたあと、
「書いたから、見てね」と伝えると、  
彼は必ず読んでくれた。  
でも、すぐには読まないことも多くて、  
何度か催促して、ようやく目を通してくれる──  
そんなこともよくあった。




読んでくれたときは、ちゃんと感想をくれた。  
「丁寧に考えてくれてありがとう」  
「そうやって伝えてくれるの、嬉しいよ」って。



でも私は、どこかで思ってしまっていた。




──読むの、めんどくさいのかな  
──こんなふうに気持ちをぶつけるの、重いのかな




それでも、やめられなかった。  
怒らせたくない、失いたくない、  
“また何かを誤解される前に、ちゃんと伝えておきたい”




そんな想いが先に立っていたから。



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そして、気づけばそれを1年近く続けていた。



毎月書いて、送って、読んでもらって。  
でもある日、ふと感じてしまった。



──もう、これは私の自己満足かもしれないな



彼の反応が冷たいわけではない。  
でもどこかで、“気を遣わせてる”自分に  
だんだん苦しくなってきた。




それから私は、そのブログを書くのをやめた。  
静かに、自分の中で。



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気づけば、私たちの関係は  
“上下”のような空気になっていたと思う。




私は下手(したて)に出て、  
何かあればすぐに謝る側。




「大丈夫?」と送るのも私。  
「ごめんね」と言うのも私。  
「ありがとう」を多く伝えるのも、やっぱり私。




一方で彼は、  
「何も言わないけどちゃんと伝わってるよ」  
そんなふうに言うだけで、  
自分から歩み寄ってくることは少なかった。




でも彼自身は、そんな関係に気づいていなかったと思う。




「気を遣わずにいられる関係っていいよね」  
「何でも話せる今の感じ、俺は好きだよ」




──私の中では、ずっと気を遣い続けていたのに。




本音を話すと、怒られるかもしれない。  
誤解されて、また1ヶ月会えなくなるかもしれない。  
そう思って、私はいつも、言葉を飲み込んでいたのに。


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だけど、それでも私は離れなかった。




彼の中にある優しさを、私は知っていた。  
だから、あの頃の私は「我慢」という形で関係を保っていた。



今思えば、それは“恋”というより  
“許されるための努力”だったのかもしれない。



でも、そうしなければ失ってしまいそうで、  
私には、それしか選べなかった。



彼とまた笑い合いたい、ただその一心だった。


(第4章へ続く)