さて、肝心の練習が始まり、私は3コースを泳いでいる。


相変わらず、1コースの杏や海は速い。


今日の練習のシメは、50メートル×2本の


タイムトライヤルだった。


1本目は自由形。


自由形といっても暗黙の了解で皆クロールを泳ぐ。


2本目は自由形以外の泳ぎ。私は平泳ぎである。


2本ともベストタイムではなかったが、イメージ通りに泳げて良かった。



ちなみに女子メドレーリレーは、


綾が背泳ぎ、私が平泳ぎ、海がバタフライで、杏がクロールである。



練習が終わり、着替え終わると17:30であった。


髪の毛を乾かす為、蒸し暑い更衣室を出た。


タイルの上を素足で歩くには熱すぎたので、水に濡れている部分を


探して、そこで髪を拭いていた。


さっさと着替え終わった淳やテツが帰ろうとしていたので


バイバイをして見送り、着てたメールに返信をしてたりした。



照りつける太陽であっという間に体は乾き、


耳の中と鼻のムズムズが妙に際立った。


ふー疲れた、疲れた。暑い、暑い。


メッシュキャップを被って、鼻のつーんとする感じを


味わいながらぼーとしていた。


ヤス、塩素入れすぎ。



更衣室の中から 


「マリちゃんバイバーイ」という杏の声とマリーンの笑い声が聞こえた。


2人もとても仲が良い。


杏が出きて、帰ることとなった。


杏のビーサンがかわいかったので


今日はお互い交換して履いて帰った。

例の彼女・・・こんな書き方するとドクドクしいけど、


すごくナチュラルな子で名前は杏。


泳ぎはというと、どんな大きな大会に出ても


負けたところを見たことがない。


既に色んな学校から推薦の話しが来ているが、


彼女は勉強がまるっきしダメで


将来は美容師になりたいとのこと。


結構いろんな人の影響を受けやすい体質らしく


気分の浮き沈みも人並みにあり、ごく一般的な子だ。



そう、こんなに速く泳げるのに、あまり水泳に固執せず、


とりえずの部活といった感じ。泳ぐのは学校だけで


終われば友達や彼氏と普通に遊んでいた。


もちろん私もしょっちゅう一緒に遊んだ一人である。

泳ぐコースは速いもの順に第1コースから数名ずつに分かれる。



海は勿論1コースを泳ぎ、そこには貴司、テツ、淳という精鋭が揃っていた。



そして1コースを泳ぐ人は、もう一人いて・・・、


誰よりも先にプールに入り、飛び込んでいたあの彼女だ。



ようやく、例の彼女について触れることにする。

この子の名前は海と書いてマリーンと読む。



親の顔が見てみたいとよく陰口を叩かれているが、



実際会ったことのある私が見るにどこにでもいる普通の親だ。



と、書きつつも少しの同情と憧れが入り混じる。



私の由香という名前はまあまあでしょうか。



あなたはどのように子供の名前を付けますか?



そこでも妥協したりするものなのでしょうか?



私は自分の子供の名前を考える時、



幸せを感じていますでしょうか?



微妙な親? 



仮にそうであっても、いちいちウルサイこと言う人は



医者に 「微妙に癌っぽいですね」と言われて大いに悩めばいい。

とりわけ先輩後輩の関係が緩い




我が水泳部だけに、統制することは難しく


総じてレベルの高いチームであったが、



練習の質は個人のモチベーションに大きく委ねられていた。



中でも一個下の2年の海は練習をサボることが多く、練習に来ても



ヘッドフォンをしては漫画を読んでいる光景がしばしば見受けられた。



ただ憎めないのは何故だろう。



彼女は誰に対しても甘え上手で、そして実力があるためだろうか。


海は水泳雑誌に登場することはざらで、


同年代の中ではトップスイマーであることは間違いない。



この日も海は私の膝の上にチョンと座り、


愛らしい横顔を私の肩に乗せ、


「眠いんです~」 と、へばり付くように話しかけてきた。


可愛らしい子だ。

こんなんでよく泳げるなと思うくらい細い腰で




唯一、おしりと太ももがふっくらとしていた。




決して筋肉質ではないが手首や肩、足が柔軟な子だった。




彼女からタバコのにおいがするのが


少々気になってきたが・・・。