私は、研究で行き詰っている留学生や日本人の学生のために、企業で新製品の開発や業務改善に活用されている問題解決手法、VE・TRIZを、大学の研究にも活用する事を提案しようとしている。
リンク:提案!問題解決手法(VE・TRIZ)を研究に応用する
特に、TRIZを研究に活用するためには、あなたが研究を通じて解消しようとしているシステムのコンフリクト、そして、それを構成する具体的なコンフリクトを、関係者のあいだで明確にしておくことが重要であるとした。
リンク:TRIZを研究に応用する、コンフリクトは明確に!
それらのコンフリクトに、『40の発明原理』を適応すれば、何かしらのアイディアは出てくるはずである。
しかし、私は、そのような理解は、研究活動におけるTRIZの使い方としては適切ではないと考えている。
ひとまずここでは、研究活動において『40の発明原理』をどのように活用するかはおいておいて、とりあえず、理工系分野の研究と『40の発明原理』の関連性を確認したい。
そもそも研究とは何であろうか? その定義づけは研究分野によって差異があるかもしれない。特に最近は、数えきれないほどのさまざまな研究分野が存在しており、細分化されたそれぞれ分野では研究の対象や方法も異なっていることだろう。
しかし、それでも共通して言えることはある。
少なくとも、どの分野の研究も、その活動を通じて、なにかしらの問題解決に貢献しようとしているといえるのではないだろうか。
だからこそ、私は、あらゆる分野で活用可能な『40の発明原理』を積極的に研究にも応用するべきであると思っている。
ここでは、理工系の分野で『40の発明原理』が共通していることを確認するために、私が、理工系の研究を連想した例を挙げていきたい。あなたの専門分野によっては聞いたことがない例もあるであろうが、いくつか、なるほどと思っていただければ幸いである。
また、あなたが研究している分野の発明にも『40の発明原理』の発想がみられると思うので、その点についても、ぜひとも確認していただきたい。
1:分割原理
・数字の分類、有理数、無理数
・統計学、主成分分析
・説明できない部分に関して新たな理論を考える
・元素の族
・専門分野
2:分離原理
・フィルター回路
・濾過装置
・エッチング
・解明できていないことを解明する
3:局所性質原理
・応力集中
・強化ガラス
・フラスコ、ビーカーの水を流すところ
4:非対称原理
・ろうと
・プロペラ
5:組み合わせ原理
・材料の混合
・自動車、スマホ、技術の集合体
6:汎用性原理
・万能試験機
・電子、原子核
・DNAという考え方
・原子・分子という考え方
7:入れ子原理
・単位
・数字
・専門分野
8:つり合い原理
・天秤ばかり
・強化ガラス
・ショットブラスト
9:先取り反作用原理
・スポイト
・推し湯
10:先取り作用原理
・統計学、回帰分析
・老朽化対策
11:事前保護原理
・ゴム手袋
・保護メガネ
12:等ポテンシャル原理
・気圧計
・湯口と推し湯(鋳造)
13:逆発想原理
・旋盤
14:曲面原理
・コイルばね
・工作機械
・コイル、磁場が発生
・球状黒煙鋳鉄
15:ダイナミック性原理
・振動センサー
・超音波洗浄
16:アバウト原理
・円周率π
・規格
・幾何交差
・等高線、コンター図
・数字と単位
・有効数字
・モデル
・鍛造、圧延
17:多次元移行原理
・虚数
・フーリエ展開
・3dプリンター
18:機械的振動原理
・楕円振動切削
・アクティブサスペンション
・振動を加えて繊維をふわふわにする
・振動を加えながら転写すると精度が上がる
19:周期的作用原理
・テーラー展開
・周期表
20:連続性原理
・国際会議
・ジャーナル
・モーター
・改善の考え方
・組み立てライン
21:高速実行原理
・エアーによる
・焼き入れ
・衝撃試験
22:“災い転じて福となす”の原理
・廃棄物の利用
23:フィードバック原理
・フィードバック制御
24:仲介原理
・潤滑油
・ロウ付け
・溶接
25:セルフサービス原理
・自動運転
・AI
26:代替原理
・シミュレーション
・血液検査
・ひずみゲージ
・画像分析
・型による成形
27:“高価な長寿命より安価な短寿命”の原理
・キムワイプ
・ウエス
・鋳造の砂型
28:機械的システム代替原理
・マニピュレーター
・機械学習
29:流体利用原理
・エアバッグ
・連続体力学
・ウォーターカッター
・水力発電
・ウォータージェット織機
・エアジェット織機
・油圧シリンダー
・タイヤ
30:薄膜利用原理
・メッキ
・ショットピニング
・フォトレジスト
・フッ素塗布
・プレス加工
31:多孔質利用原理
・バッテリーセル
・細胞という考え方
・タイヤの溝
32:変色利用原理
・リトマス試験紙
・コンター図
・キズをつける塗料
33:均質性原理
・単位
34:排除・再生原理
・エンジンのサイクル
35:パラメータ変更原理
・気球
・原子間力顕微鏡
36:相変化原理
・蒸気機関
・鋳造
37:熱膨張原理
・バイモルフ
・気球
・温度計
38:高濃度酸素利用原理
・化学肥料
39:不活性雰囲気利用原理
・窒素の雰囲気
・ステンレス鋼
40:複合材料原理
・カーボンファイバーで強化された樹脂
・鉄筋コンクリート
いかがだろう?これだけ見ても、私たちの身の回の多くの現象や技術は『40の発明原理』の発想がけっこう含まれていることが分るのではないだろうか。
人類は、その長い歴史の中で、さまざまな理論や技術を進化させてきた。
少し大げさな言い方かもしれないが、それらは、コンフリクトの設定と、『40の発明原理』に見られる発想のパターンによるその解消の連続であったはずだ。
おそらく、その点においてはこれからも変わらないだろう。
ということは、あなたが研究をおこなっていて、何か問題に直面しているのであれば、その解決のためのヒントも、『40の発明原理』の中にあったとしてもおかしくないだろう。