「山へ行くつもりじゃなかった。」 -21ページ目

僕の失敗学。

1993年頃。
渋谷系という音楽が
渋谷という街のレコードショップを中心に話題になっていた。
僕はその街から遠くはなれた地方の大学生だった。

ずっと遠い場所でのこと。
実際にはぼんやりして、あまりリアルではなかった。

「海の向こうでは流行しているマンチェダンスで小躍りしてるらしいよ」
「それは名前からして、さぞエロい踊りなんだろうね」とか。

「若い頃は酒の席で一升瓶を股に挟み、流行していた猥歌を皆で歌っていたんだよ」
「へーおじいちゃん、そのよかちん音頭ってどんな歌?」みたいな。

「こういう音楽って、渋谷系って呼ばれてるらしいよ」
「へーすごいね、かっこいいね」なんて言いながら
からっきし酒が弱いサークルの友達と、
部屋でぼんやりCDを聴きながら、ビールを飲む。

胃がかっと熱くなって、たちまち脳みそがしびれる心地がする。

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僕の住んでいたところは
都会みたいに人も物も多くなくて、
刺激的で濃いものにまみれてはなかった。
田舎は田舎なりに。平和で。

学校もなんとなく行って
友達と遊んで お酒を飲んで
一升瓶を股に挟んではいないけど。

明け方、酔ってフラフラ歩いて
ゴミ捨て場のゴミの上で寝ていたり。
(人間のクズ。というかゴミそのものだ。)

ちょっと交通の便がよくて、仕事もそれなりにあって
タワレコでもあったら、出ていきたくなくなるぐらい
のんびりと。平和で。

「こんな大事な時にオカモトもラテックスもない!」とか。
普通の大学生ぽい。ちょと違うけど。いろいろ。

他の学生と、少し違ったことは、
割と熱心に音楽を聴いたり、レコードを買っていたことか。
情報は少ないけれど、それなりに。

音楽のことも、そこそこ知っている気でいた。

それが打ち砕かれたのは、
天井まで届く棚に詰め込まれたCDやレコードを
遊びに行った、Kさんの家で目にした時だ。

無数の知らないアーティストの中に、ようやく知っている名前を見つける。
全く敵わないと思った。

--

当時、よく講義をさぼって、入り浸るレコード屋さんがあった。
商店街からはずれた飲み屋街の近くの路地を抜けると
その、こじんまりとした店がある。

レコードジャケットが、コラージュされた立て看板には

『黒人の良い音楽あります』

カウンターの中には、レコードやCDが乱雑に積み上げられていて
いつもその中に埋もれて、店主のKさんが座っている。

大学生でお金もないのに
Kさんと話をしながら、様々なレコードを物色した。
コロムビアのポータブル・プレイヤーの前を陣取って
聴きたいレコードを好き勝手にかけていた。

「好きそうなレコード入ったよ」
なんてニコニコしながら
「それ、買う?どうする?」

当時の僕からしたら高いレコードを袋に入れて
Kさんは、「はい」と、ぐいぐい押し付けてくる。

「バイト代出るまでまだまだあるしなぁ、しばらくは学食抜きだな。」
なんて思いながら、お金を手渡すと、
結局、商品は半額の値段で。
お釣りを渡してくれた。

レコードを持った帰り道。
楽しくて、どうしようもなく嬉しかった。

彼は、良い音楽もたくさん教えてくれた。
椅子から転げ落ちそうになるぐらいの
ビックリする音楽、ドキドキする音楽。
ペットサウンズ なにそれ食えんの?

渋谷系といわれる音楽を聴いて、笑いながら
「へー」なんて言って
知らない外国の人が歌う、ソックリな曲をかけてくれた。

池田屋の階段から転げ落ちそうになった。
椅子どころではない。

今のように、インターネットも無く音楽の情報も少なかったけれど、
そうやって知ったレコードには、格別の思い入れもあり、
密度も異常に高かった。

情報が少ないという環境は、
音楽を聴くのには、ちょうどよかったのかもしれない。
そんな中で良いと思った曲は、
今聴き返しても、やはり、ちゃんと、「がんばって」いる。

そのときの「こころ」で生きていた僕は
渋谷系を経由して、素晴しい音楽を聴く。
これが僕の音楽の愛し方だと、強く思っていた。
もちろんあのレコード屋に行く前の話。

Kさんがよくこんなことを言っていた

聴くべき音楽がたくさんある
良い音楽を聴こう
渋谷系は…
そこそこでいいんじゃない?
ギターポップも好きは好きで
苦手な音楽も聴こう
こんなの買っちゃったなんて思わないで

世の中に
どうしようもない音楽はたくさんあるけど
良い音楽なら失敗とは違うかな
その時苦手なだけ
そのうち好きになるから

たぶん

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僕が参加させてもらっている
「そこそこ」渋谷系がかかる
West Mountain Driveという、パーティー。

僕も毎回楽しみで、本当にどんな曲がかかるかわからない。
雰囲気を説明するのはなかなか難しいですが。

来てくださった皆さんが良い音楽に出会えて
あの時のレコード屋さんの帰り道のような
昔の僕と、同じような、そんな
楽しい気持ちになってもらえたら、とても嬉しいのです。



$「山へ行くつもりじゃなかった。」-DJ SATORU










SATORU

自身の音楽のルーツとなっている
GUITAR POPと80年代ネオアコを中心に聴き
グッドメロディー&ハーモニーをキーワードに
近年では60~70年代の素敵な作品と育毛に夢中。

音楽をキラキラと表現するのは、あまり好きではないけれど、
やはりそんな感じの、しあわせ感あふれる世界を
フロアで共有できたら良いなと思っています。

略歴
85年 コロコロコミックに夢中
89年 中二病を患う(未完治)
91年 高1の夏休み フリッパーズギターのカメラトークと出会い
    ピンとこずに押し入れにしまい、チャリ立ちこぎで海水浴へ。
    解散するまでじっくり熟成させる。
97年 しょうもない曲なのに高いレア盤を流すと盛り上がるイベントに飽き飽き。
98年 1枚のレア盤より10枚の定番と強く思う。
99年 ボーダー着とったらなんとかなるわけではない。
02年 「あなたと知り合って良かったことは、Prefab Sproutを知ったことだけだ」
    と言われ、身震いするほど興奮し立ちこぎで海へ。
05年 合法的に盗撮をする100の方法を思いつく。
06年 よくよく考えると違法だったので、樹海へ急ごう。
08年 拠点を大阪に移す。年間10本以上の職質をこなすなど、多忙な日々を過ごす。
09年 大阪のダイオキシンの濃度に適応できず、息も絶え絶え。
10年 渋谷系パーティーWMDが始まる。

$「山へ行くつもりじゃなかった。」-relay column 2011


WMD春のリレー・コラム。
第3回目のDJ SATORUさんのコラムは、いかがでしたか?
中2病は慢性化の様子ですが、只今恋人募集中だそうです。
自薦・他薦は問いません。あて先は(以下省略

次回、第4回目は、DJ YUME さんです。
また、がらりと雰囲気の違う文章を、ぜひ皆様に読んでいただきたく。
次回は4月29日。もちろん、金曜日に更新です。
休暇をとった人も。誰かのために働いてらっしゃる人も。
お楽しみに。

渋谷系のことは何も知らない。

こんにちは。
ちょっとした縁がきっかけで、WMDに参加させて頂いています、ケンです。
気付けばもう、3回目も終わってしまいました。
早いですね、ほんと。

オーガナイザーでもあるkorさんとの出会いは、
とあるラウンジ的なイベントで。
マイケル・ジャクソンが亡くなったすぐ後だったかと、記憶しています。

僕は彼への追悼の意味も込めて、
当たり前のように「MUSIC & ME」のレコードを、廻したんです。
それがきっかけでいろんなお話しをして、今に至るわけです。

恥ずかしい話、WMDに参加するまで、
ピチカート・ファイヴだって、フリッパーズ・ギターだって、
“ちゃんと”聴いたことがありませんでした。

フリッパーズ・ギターに関しては、アルバムを途中で止めてしまい、未だに一周も聴いた事がない。
その後、聴いたピチカート・ファイヴのアルバムには、あまりに洗練されたサウンドに感動しました。
パーティの当日には、旧いジャイブをかけて、その後にオリジナル・ラヴをかけてみました。

なので、なぜ“渋谷系”をテーマに取り上げているWMDに参加させて貰っているのか、
自分でもよく解らない……。

でも。
デューク・エリントンだったり、アート・テイタムだったり。
コールマン・ホーキンスだったり、ファッツ・ナヴァロだったり。
はたまた、
サム・クックだったり、バーバラ・ルイスだったり。

書き出すとキリがないのですが……。

この方たちの演奏する音楽は、どうしようもなく、大好き。


「音楽を好きな気持ちは、年齢や性別、人種や言葉の壁も超越してしまう。」


これは、大好きで、世界一のヴォーカリストだと個人的に思っている
エラ・フィッツジェラルドさんから学んだこと。

彼女の歌は世界各国どこに行っても、人々を幸せに、楽しい気持ちにさせてくれる。
良い音楽は世界を、そして、人々の心を繋ぐんだ、と。

WMDというパーティにも、同じようなことが言えるんじゃないかと、
僕は思っています。

“渋谷系”という的に目掛けて、DJ各々が、
ジャンルという垣根を越えて、音楽を打つ。
時には、緩やかに。時には、狙いを定めて。
ちゃんと、つま先さえ的に向いていれば、
うっかり外れそうでも、意外と的に収まっていくものなんですね。

その足元に、共通しているのは、”とにかく音楽が好きでたまらない”という気持ち。
“素敵な音楽をみんなに少しでも知ってほしい”という想い。

だから、僕はWMDが好き。
DJもお客さんも、音楽への愛情で溢れているから。
そんなパーティに、一人でも多くの方が来てほしいと願って止まないです。


前回の、missOLIVEさんのコラムは、楽しんで頂けましたか?

でも、僕の場合は、彼女とはちょっと違うかも。

最後まで読んでくださって、
ありがとうございます。
ぜひ、次回のWMDは、会場でお会いしましょう。

僕は、本当に、「渋谷系」については、何も知らないんです。






$「山へ行くつもりじゃなかった。」-DJ KEN




















KEN

WMDのクルーでは、最年少。
見た目は子ども、耳は中年。
周りの皆からは、「耳年増」と呼ばれることも。

15歳の夏に手にした、セロニアス・モンクのレコードを機に、
モダンジャズへ傾倒する日々が始まること10年。

今この2010年代に、
フロアでカウント・ベイシーがかかり、
みんなが踊っていたら素敵だなって、
ただただ、そんな幸せなことを日々考えていたりします。





$「山へ行くつもりじゃなかった。」-relay column 2011


WMD春のリレー・コラム。
第2回目のDJ KEN君は、いかがでしたか?
彼は、ジャッキー・ディヴィスとかも、選曲しちゃうんです。
本当に、耳年増で最高です。

引き続き、第3回目は、DJ SATORU さんです。
ギター・ポップ愛についてか、もしくは自虐ネタか。
次回は4月22日。もちろん、金曜日に更新です。
お楽しみに。










「スウィート・ソウル・レヴュー」を知らなくても、死なない。

『渋谷系』について考えることって、
『わたしらしさ』というものが、
どこでどういう風にして形成され、
それが、わたしの知らない何処かの誰かに、
どんな形で認識されているのか。ということに、
答えを見いだそうとするのと同じくらい困難なことかも。



たとえば、わたしは、誰かに、
「渋谷系ってなんですか?」と聞かれると、
『ピチカート・ファイヴ』とか『フリッパーズ・ギター』とか、
単語(というよりはバンド名とか固有名詞)を一挙に羅列して、
「どうか、そこから汲み取ってほしい。」と願うばかり。



勘の良い人だと、
そこで、「ああ、なるほど。」となって。
わたしはとりあえず安堵して、話を逸らす。

「ピチカート・ファイヴって悲しい歌が多いね」とか。
「フリッパーズ・ギターって、オザケンとコーネリアスだよ」とか。

そこから次第に、
渋谷系ということばの、
表面的な形態云々についてではなくて、
そう呼ばれている音楽の音楽そのものについての話題にすり替える。

ギター・ポップなの?渋谷系って。
「うん。ギター・ポップ的なものもある。渋谷系って。」

ジャズなの?渋谷系って。
「うん。ジャズ的なものもある。渋谷系って。」

ロックなの?渋谷系って。
「うん。ロック的なものもある。渋谷系って。」

え?なんなの?渋谷系って。
「え?だから・・・渋谷系って・・・。」



ところが、勘の悪い人だと、
「渋谷系」=「ピチカート・ファイヴ」
「渋谷系」=「フリッパーズ・ギター」
という数式でもって、認識し始めてしまう。

わたしは面倒くさいから、
それについて特に否定せずに、放っておく。

ぜんぜん間違っているわけでもないし。

別に、ちゃんと知らなくても、死なない。

わたしだって、同じ。
ことばにして言い表すことができない程度。



本当に知りたかったら、
ウィキペディアで調べれば良い。



て、いうか。

わたしは、渋谷系の
本当のところを本当は知らない。
歴史も、ルールも、その発祥も、その終焉も
知らないでいるのだけれど、知ろうとしたこともない。

ただ、大々的にわたしが好きだとしている音楽に名前があって、
それが、偶然、たまたま「渋谷系」という名前で呼ばれているのであって、
それ以上でもそれ以下でもない。それ以上もそれ以下も知りたくない。

それ以外は、知りたいけれど。



だから。わたしは思う。
別に、知らなくても死なない。

それより、なにより、とりあえず、聴いてみてよ。

ピチカート・ファイヴを。
フリッパーズ・ギターを。
オリジナル・ラヴを。
カヒミ・カリイを。
カジ・ヒデキを。
ヴィーナス・ペーターを。



それより、なにより、来てみてよ。

不定期で、
大阪は堂山町にある、
エクスプロージョンで開催されている
WMD~山へ行くつもりじゃなかった。という、
ちょっと変な名前のパーティーがある。
ひとつ、そこへおいでよ。

渋谷系という音楽を、とりあえず一括りにして
それを模索しながら楽しんでいるパーティーがある。

ひとつ、そこへおいでよ。

つぎの開催は、とりあえず、夏くらいにあるから。







missOLIVE

$「山へ行くつもりじゃなかった。」-missOLIVE





















アイ アム ドラァグクイーン
ワタシ は ドラァグクイーン です

正式表記『missOLIVE』
否、MissOlive。否、MissOLIVE。
カタカナ表記は正しく『ミス・オリーヴ』

2005年、
突如として派生した虚像は、とある男の美意識。

それは酒を愛し、
美男子を愛し、リズムを愛し、パーティーを愛す美意識。

夜に生まれ、
夜に生きて、夜に死ぬ美意識。

カッコイイおんな、
カッコイイおとこを演じる美意識。

つまり、
missOLIVEとは、
とある男がmissOLIVEに扮して展開するコントです。





$「山へ行くつもりじゃなかった。」-relay column 2011


WMD春のリレー・コラム。
第1回目のミス・オリーヴさん。意外に直球でした。
いかがでしたか?
第2回目は、DJ KEN さんです。
次回は4月15日。金曜日に更新。
お楽しみに。