シン・ト・ミーチョ!
そのラテン系の男が
「シンジ・カガーワ?」
みたいなことを言ってる気がしたので、僕が
「ノノノ!シンジ・オカザーキ!」
と答えたところ、彼は怪訝そうな顔をした。
相手がドイツ人だったらどっかーんと大爆笑をもたらすはずの会話である。
(ただしサッカーに興味のないかたには全く理解不能のやりとりだが)
疲弊して会社のビルを出たその日。久しぶりに隅田川に出て散歩して帰ろうかとも思ったが、そんな元気もないのでいつもの道を最寄り駅まで歩く。
向こうからやってきたのは陽気なラテン系の男だ。
僕に何か尋ねてくるから話を聞けば、なんとかムーチョ!だって。
ベサメムーチョ?カラムーチョ?
ともかくスペイン語なんて分かるはずもないから身振り手振りでの会話を試みる。
いっしょに歩いてもいいか、みたいな素振りを彼がするので、ともかく僕はそれを受け入れることにした。
ともかく分かっているのは彼がスペイン人だということだけだ。
道すがら何やらサッカーの話題になり、冒頭のやりとりをしたのである。
かつてウルグアイ人だかパラグアイ人だかに間違えられたことのある経験から、僕には彼が、おそらく「こいつ何となく話が通じそう」と直感したのではないか、という予感があった。
シンジ・オカザーキのくだりにはキョトンとした彼だったが、僕たちはなんだか妙なシンパシーを持ちつつ歩いた。
まったく通じない会話の中にも、通じているような何かがそこにあったりして。
こういう経験も悪くはないから、このまま彼の気が済むまで付き合おうか、と思った矢先に、彼は急にこんなことを口走り始めた。
シン・ト・ミーチョ!シン・ト・ミーチョ!
そうして彼は、その地下鉄駅の階段を喜び勇んで降りて行った。
僕は急に寂しくなった。
それは、かりそめの国際交流が突如として幕を閉じてしまったから。
そして、もうちょっと2人で散歩してみたかったから。
その日僕は、本来の最寄り駅をやり過ごして、さらにふた駅分、桜田門駅まで歩いた。
あのスペイン人は、あのあとどこまで行ったのだろうか。
新富町から有楽町線に乗って。
「シンジ・カガーワ?」
みたいなことを言ってる気がしたので、僕が
「ノノノ!シンジ・オカザーキ!」
と答えたところ、彼は怪訝そうな顔をした。
相手がドイツ人だったらどっかーんと大爆笑をもたらすはずの会話である。
(ただしサッカーに興味のないかたには全く理解不能のやりとりだが)
疲弊して会社のビルを出たその日。久しぶりに隅田川に出て散歩して帰ろうかとも思ったが、そんな元気もないのでいつもの道を最寄り駅まで歩く。
向こうからやってきたのは陽気なラテン系の男だ。
僕に何か尋ねてくるから話を聞けば、なんとかムーチョ!だって。
ベサメムーチョ?カラムーチョ?
ともかくスペイン語なんて分かるはずもないから身振り手振りでの会話を試みる。
いっしょに歩いてもいいか、みたいな素振りを彼がするので、ともかく僕はそれを受け入れることにした。
ともかく分かっているのは彼がスペイン人だということだけだ。
道すがら何やらサッカーの話題になり、冒頭のやりとりをしたのである。
かつてウルグアイ人だかパラグアイ人だかに間違えられたことのある経験から、僕には彼が、おそらく「こいつ何となく話が通じそう」と直感したのではないか、という予感があった。
シンジ・オカザーキのくだりにはキョトンとした彼だったが、僕たちはなんだか妙なシンパシーを持ちつつ歩いた。
まったく通じない会話の中にも、通じているような何かがそこにあったりして。
こういう経験も悪くはないから、このまま彼の気が済むまで付き合おうか、と思った矢先に、彼は急にこんなことを口走り始めた。
シン・ト・ミーチョ!シン・ト・ミーチョ!
そうして彼は、その地下鉄駅の階段を喜び勇んで降りて行った。
僕は急に寂しくなった。
それは、かりそめの国際交流が突如として幕を閉じてしまったから。
そして、もうちょっと2人で散歩してみたかったから。
その日僕は、本来の最寄り駅をやり過ごして、さらにふた駅分、桜田門駅まで歩いた。
あのスペイン人は、あのあとどこまで行ったのだろうか。
新富町から有楽町線に乗って。