旅人と黒い影(その3)
色とりどりのシャボン玉たち。
そこには、旅人がこれまでみてきた、いくつかの夢の風景が映し出されていました。
まちかどで、子どもたちを集めて紙芝居をする自分のすがた。
泣いている人に、美しい笛の音色を聴かせてなぐさめる自分のすがた。
心が動かなくなってしまった人を、あたり一面の菜の花畑に連れて行って、いっしょになって「きれいだね」と叫んでいる自分のすがた。
旅人は、自分の夢をこうしてながめるのは初めてでしたから、
それはもうおどろいて、「ああ、そういえばこういうことを考えていたなあ」とつぶやきました。
黒い影は、これらのシャボン玉を見て、ふしぎそうにたずねました。
「きみの夢というのは、こういうことなのかい?」
「こういうこと?ああ、すっかり忘れてしまっていたけれど、俺はこういうことを考えていたんだよ。なにかおかしいかい?」
黒い影は、しばらく黙りこくって考えていました。
そして、こう言いました。
「いや、なにもおかしいことはない。でもね。」
「なんだい?」
「おいしいものをはらいっぱい食べたり、大きな家に住んだり、そういうことはいいのかい?」
今度は、旅人が黙りこくって考えました。
そして、こう言いました。
「そういうこともすてきだね。わるくない。けれど、俺はいいや。だってね。。。」
「だって。。。なに?」
「そういうものって、いつかは消えてしまうじゃないか。」
(つづく)
そこには、旅人がこれまでみてきた、いくつかの夢の風景が映し出されていました。
まちかどで、子どもたちを集めて紙芝居をする自分のすがた。
泣いている人に、美しい笛の音色を聴かせてなぐさめる自分のすがた。
心が動かなくなってしまった人を、あたり一面の菜の花畑に連れて行って、いっしょになって「きれいだね」と叫んでいる自分のすがた。
旅人は、自分の夢をこうしてながめるのは初めてでしたから、
それはもうおどろいて、「ああ、そういえばこういうことを考えていたなあ」とつぶやきました。
黒い影は、これらのシャボン玉を見て、ふしぎそうにたずねました。
「きみの夢というのは、こういうことなのかい?」
「こういうこと?ああ、すっかり忘れてしまっていたけれど、俺はこういうことを考えていたんだよ。なにかおかしいかい?」
黒い影は、しばらく黙りこくって考えていました。
そして、こう言いました。
「いや、なにもおかしいことはない。でもね。」
「なんだい?」
「おいしいものをはらいっぱい食べたり、大きな家に住んだり、そういうことはいいのかい?」
今度は、旅人が黙りこくって考えました。
そして、こう言いました。
「そういうこともすてきだね。わるくない。けれど、俺はいいや。だってね。。。」
「だって。。。なに?」
「そういうものって、いつかは消えてしまうじゃないか。」
(つづく)