おまじない
街はずれの公園の 水飲み場で、
目を真っ赤に腫らした男が、バシャバシャバシャ と顔を洗っていました。
男が長いことそうしていると、ふと、水飲み場のすぐ横にある ブランコのたもとに、ちいさな女の子がしゃがんでいるのに気がつきました。
ようやく手を止めた男が、ポケットから汚れたハンカチを取り出し、顔を拭いていると、女の子が近づいてきて、こう言いました。
「おじちゃん、エンエンしてたの?」
男はギョッとして、言葉を失いました。
女の子はかまわず続けました。
「おむらいす」
「え?なんのことだい?」
「おまじないよ。」
「おまじない?」
「うん。かなしいときの、おまじない。おっきなこえで、いうのよ。
お・む・ら・い・す って。」
「・・・・・」
男があっけにとられて黙っているのをよそに、女の子は次の瞬間にはもう、駈け出していました。
ブランコの向こう側まで駆けていったところで、女の子は振り返ってこう言いました。
「いい? おじちゃん。おっきなこえで、いうのよ。 でもね、それでもまだエンエンしたくなったらね・・・」
女の子が去った公園は、少し、寒さが増してきました。
風がざわざわと吹き始め、あたりの木や花が左右に揺れ始めたからです。
けれど、これは冬だからではありません。
風や木や花は、ただもう、クスクスと笑い始めたのでした。
彼らが大好きな、なつかしい、ちいさな女の子を、久しぶりに見かけたからです。
再びひとりになった男は肩をすぼめながら、大きなくしゃみをしました。
男はつぶやいてみます。
「お・む・ら・い・す・いっちょう!ケチャップ たっぷり・・・・・・」
男の涙は、もうとっくにどこかに行ってしまいました。
そして、
「あたち? とう子」
と言い残して、再び駈け出していった女の子のことを思い、ウフフっと彼は、笑ったのでした。
目を真っ赤に腫らした男が、バシャバシャバシャ と顔を洗っていました。
男が長いことそうしていると、ふと、水飲み場のすぐ横にある ブランコのたもとに、ちいさな女の子がしゃがんでいるのに気がつきました。
ようやく手を止めた男が、ポケットから汚れたハンカチを取り出し、顔を拭いていると、女の子が近づいてきて、こう言いました。
「おじちゃん、エンエンしてたの?」
男はギョッとして、言葉を失いました。
女の子はかまわず続けました。
「おむらいす」
「え?なんのことだい?」
「おまじないよ。」
「おまじない?」
「うん。かなしいときの、おまじない。おっきなこえで、いうのよ。
お・む・ら・い・す って。」
「・・・・・」
男があっけにとられて黙っているのをよそに、女の子は次の瞬間にはもう、駈け出していました。
ブランコの向こう側まで駆けていったところで、女の子は振り返ってこう言いました。
「いい? おじちゃん。おっきなこえで、いうのよ。 でもね、それでもまだエンエンしたくなったらね・・・」
女の子が去った公園は、少し、寒さが増してきました。
風がざわざわと吹き始め、あたりの木や花が左右に揺れ始めたからです。
けれど、これは冬だからではありません。
風や木や花は、ただもう、クスクスと笑い始めたのでした。
彼らが大好きな、なつかしい、ちいさな女の子を、久しぶりに見かけたからです。
再びひとりになった男は肩をすぼめながら、大きなくしゃみをしました。
男はつぶやいてみます。
「お・む・ら・い・す・いっちょう!ケチャップ たっぷり・・・・・・」
男の涙は、もうとっくにどこかに行ってしまいました。
そして、
「あたち? とう子」
と言い残して、再び駈け出していった女の子のことを思い、ウフフっと彼は、笑ったのでした。