16. | 我ここに在りてここに無し

我ここに在りてここに無し

青きBOUGAの果て

ひとりごとのように

詩と小説を書き綴ります。

何か心に響くものがあれば

それだけで。







 春は、音も無く街に流れていた。





 街行く人の肌は、shopping window に白い影を映し始めていた。



 
 やるせなく。。。





 そして。。。




 とめどなく。。。





 溢れ出したアルカナへの想いが、恒太郎の心を潤していた。







 いつもと変わらぬデスクに腰かけ仕事に取り掛かったが、恒太郎の頭の中はアルカナを手繰り寄せる方法だけが漂っていた。




 社内の風を誤って読み違え仕事がスムーズに運ばない時、決まって自らの skill に目を伏せながら酒で誤魔化していた。



 しかし、読み違えてはならない。。。"意志"だけは。。。



 そう恒太郎は思った。




 風を感じ取るような、そんな感覚を研ぎ澄ますしかないと。





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 今まで自分の心の傷を癒すことも忘れ、引き出す記憶さえ無くしていた恒太郎。




 社会という不毛の中を、無理にでも身体を押しながら走り続けてきた。





 自ら複製された性を少しずつ失いながら、"意志"を無理にでも"責任"という文字にすり替えてながら。




 社会の蛮行を見過ごすにはあまりにも狭い世界。


 誰しも意識するなという方が無理だろう。



 しかし、恒太郎はそれすら意識から遠ざけ、自らの"意志"にさえ背を向け続けてきた。





 今、アルカナという心の中の切り札を手繰り寄せ、失えないものが何なのかを問い始めていた。




 それが、もはや存在せず、これからも決して存在しないものだと。。。そう思い続けていきたもの。




 恒太郎の口癖が、また子守唄のように聞こえ始めていた。



 habit of saying。。。


 For what ?。。。


 What are you living for ?





 恒太郎は、その答えを掴もうとしている。



 
 時は誰も待たず、心だけ置き去りにされたまま陽は西に傾き始めていた。







 その時、恒太郎の携帯電話が震え。。。



 光を。。。放った。







 左手を伸ばした。



 

 恒太郎は携帯電話を取り、言葉を交わす間もなく社を後にし車を走らせていた。






 "意志"が走り始めていた。 
 




つづく







 
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