春は、音も無く街に流れていた。
街行く人の肌は、shopping window に白い影を映し始めていた。
やるせなく。。。
そして。。。
とめどなく。。。
溢れ出したアルカナへの想いが、恒太郎の心を潤していた。
いつもと変わらぬデスクに腰かけ仕事に取り掛かったが、恒太郎の頭の中はアルカナを手繰り寄せる方法だけが漂っていた。
社内の風を誤って読み違え仕事がスムーズに運ばない時、決まって自らの skill に目を伏せながら酒で誤魔化していた。
しかし、読み違えてはならない。。。"意志"だけは。。。
そう恒太郎は思った。
風を感じ取るような、そんな感覚を研ぎ澄ますしかないと。
今まで自分の心の傷を癒すことも忘れ、引き出す記憶さえ無くしていた恒太郎。
社会という不毛の中を、無理にでも身体を押しながら走り続けてきた。
自ら複製された性を少しずつ失いながら、"意志"を無理にでも"責任"という文字にすり替えてながら。
社会の蛮行を見過ごすにはあまりにも狭い世界。
誰しも意識するなという方が無理だろう。
しかし、恒太郎はそれすら意識から遠ざけ、自らの"意志"にさえ背を向け続けてきた。
今、アルカナという心の中の切り札を手繰り寄せ、失えないものが何なのかを問い始めていた。
それが、もはや存在せず、これからも決して存在しないものだと。。。そう思い続けていきたもの。
恒太郎の口癖が、また子守唄のように聞こえ始めていた。
habit of saying。。。
For what ?。。。
What are you living for ?
恒太郎は、その答えを掴もうとしている。
時は誰も待たず、心だけ置き去りにされたまま陽は西に傾き始めていた。
その時、恒太郎の携帯電話が震え。。。
光を。。。放った。
左手を伸ばした。
恒太郎は携帯電話を取り、言葉を交わす間もなく社を後にし車を走らせていた。
"意志"が走り始めていた。
つづく

