いつものように無機質な自宅玄関のドアをダシッャンと閉め、うなだれる背を朝日に向けたまま車に乗り込んだ。
過去など振り返る意味も無いと。。。
そう思い込んでいた恒太郎。
しかし、確かに手繰り寄せた"意志"という記憶が蘇っていた。
繰り返し記憶の ㏒ を辿っていた。
思考とは、自らの存在を確かめる唯一の手段。
そして、この移動空間だけが恒太郎の identity を満たしていた。
窓の外を流れる無意味な景色に光だけを感じ、運転するけだけの通勤。
語る相手も不要。
独り言ならいくらでも言える。
干渉することも、されることもない。
孤独には、うってつけの空間。
しかし、今日の朝は違っていた。
アルカナという"意志"と、もう一度巡り逢いたいと。
恒太郎は、なぜか。。。
自分が。。。
干渉されたいとのではないかと。。。
感じ始めていた。
それが、愛だとも知らず。。。
車が交差点に差し掛かった。
停車する車の前を流れる人の群れ。
恒太郎は、そう。。。アルカナの姿を追っていた。
記憶の中の切り札。
信号が青に変わり、車は何事も無く前に進み走り始めた。
「いったいどうしたら、アルカナと再会できるんだ。。。」
そう恒太郎は呟きながら、交差点に入りハンドルを軽く左に切った。
その時だった。
助手席の窓をすり抜けるかのように、恒太郎の瞳は信号待ちをしている女性を見つめていた。
左折した車を止め、脱兎のごとくその女性に駆け寄った。
「あっ、きっ、君は。。。あっ。。。すみません。。。」
クラクションが鳴り響く。。。
違っていた。
「俺はいったい何をしているんだ。。。」
恒太郎はひとり呟きながら車に戻り、社へと向かった。
10年男の子守唄が聞こえ始めた。
"意志"を見つめるなら、いましかない。
"意志"に触れるならいま。
どれほど遠くとも、どれほど儚くとも、どれほど切なくとも。。。
アルカナという"意志"と再会するという芯が心の中に芽生えていた。
時がどれほど自分の心を呑み込むとも、この時。。。一つ限り。。。夢は現へと想いを溢れさるもの。
いま通り過ぎたframeに、アルカナを重ね巡り逢う時を引き寄せようとしていた。
風は、音も無く春を呼び始めていた。
つづく


