砂浜でしゃがみ込む男。
水平線を眺めるでもなく、ただ空を眺めている。子供連れや男女の若いカップル、犬を連れ散歩する人。誰もが男のそばを通り過ぎていく。
煙草を取り出し、ライターを取り出し火を点けようとするが、海からの風が火を消し去る。
男は苦笑い、煙草に火を点けずに握りつぶした。
目じりの皺が、また一つ増えたと呟いているかのように、彼の眼は眩しい日の光を塞いだ。
俯きながら、もう一度タバコを取り出し火を点けようとした。
その時、白く細い手が男が点けようとする火を消す風を塞いだ。
細めた眼で、風を閉じる白く細い手の女性を振り向いて見た。
男は何も言わず、また空を見た。女性は男の隣にしゃがみ込み言った。
「何かっこっけてるの?」
男が言った。
「君を待っていただけさ」
二人は寄り添い、砂浜に佇んだまま時は流れた。
優しくも、誰も振り向く人はいない、